新宿区立大久保公園周辺で客を待っていた女性と付き添う私服捜査員。公園をぐるりと囲むように立つ若い女性たちが激増したことが、悪質ホスト問題に注目が集まるきっかけとなった(イメージ、時事通信フォト)
「普通の男の子が、いい生活ができるとか騙されて連れてこられ、先輩ホストに脅されながら自分が担当する女性客から金を巻き上げ続ける、という光景を何度も見てきたし、自分もやった。みんなそうやって罪を重ね続け、しばらくしたら後輩に罪を強要するように
なる。先輩から後輩へ悪事を強要する、の繰り返し。女性たちを友達や家族、社会のコミュニティから切り離して”ホストが必要な存在”と思い込ませて騙すように金を奪い続けることが、実質的な業務になっている」(勇樹さん)
念のために付け加えておくと、数あるホストクラブの中には、ホスト業界に蔓延るこうした悪習からの脱却を図ろうとする人たちは確かにいる。だが、いたとしても少数であり、悪癖に染まったホストクラブのように短期間で大きな収益を上げることはほぼ不可能だ。また、悪辣ではないやり方で商売を続けるには、きちんとした接客のノウハウを積み重ねないとならないが、そこまで堪えることができるホストやホストクラブ経営者がどれだけいるだろうか。
誰がいちばん儲けているのか
前出の天海さんは、いくら業界が健全化を図っても、ウイルスのようにしぶとく悪質な運営をするホストクラブが、路上で、そしてSNS上で堂々と未成年を囲い込み、まさに悪貨が良貨を駆逐するような事態に陥った結果、現状のようなカオスが生まれたと自身の見解を示す。
「悪質なホストも悪いですが、悪質なホストを使って金儲けをしているのは誰か、という闇の部分にも、もっと光が当たってほしいです。悪質なホストが次々と逮捕されていますが、結局、彼らを使っていたり、彼らに指示を出していた経営者側、運営者側を取り締まらないと問題の抜本的な解決にはつながらない」(天海さん)
たった今、様々なSNSを覗いてみても、ホストらしきアカウントが、女性と見られるアカウントに手当たり次第に「飲みに来て」「サービスする」などと言って怒涛の「営業」をかけているのがわかる。中には、未成年の女子高生らしきアカウントにも「営業」をかけるホストのアカウントもあるが、勧誘側は未成年であると単に見落としているだけなのか、確信犯的なものなのか、見当はつかない。だが、どう好意的に見ても、健全なコミュニケーションが取れているとは思い難い。彼らは果たして、ホスト業界に逆風が吹く中、本当に自主的にこのような形での「営業」を行なっているのか。
特殊詐欺事件でも、受け子や出し子などの実行犯が次々と逮捕されているにも関わらず、闇バイトなどによって次々に新たな実行犯が送り込まれ被害が減ることはなかった。だが近年では、指示役などの「元凶」とも言える人物たちが摘発されるようになり、特殊詐欺事件の全貌が明らかになるパターンが増えている。ホスト業界でも同様に、末端ではなくその「元凶」を潰さないと、健全化どころか、絶対的に悪で不要な存在との”消えない烙印”を押されることになる日は近いはずだ。