総理派閥に新たな裏金疑惑(時事通信フォト)
同派関係者が語ったように、古賀氏側への資金還流が岸田首相の指示や同意の下で行なわれた可能性は十分ある。
岸田首相、岸田派、古賀氏に「558万円」が岸田派から古賀氏に渡ったものなのか、岸田首相の国会答弁と政治資金収支報告書訂正の額が合致しないことはなぜかといった質問をぶつけると、岸田事務所は「宏池会がお答えするものだと考え、回答はしないこととしました」と丸投げ。岸田派は相当答えにくかったのか、意味不明に思える回答を送付してきた。
「宏池会における収支報告書については、東京地検の捜査が尽くされた結果、地検において公表されたとおり、前会計責任者の時代においては収入の記載漏れが存在していたとの指摘がなされましたが、支出については何ら指摘を受けておりません。その後、検察の事実認定に従って所要の修正を行ったものであり、それ以上にご説明申し上げるべきことはありません」
検察の捜査で3059万円の不記載が認定されたのに、なぜ政治資金収支報告書の訂正額は558万円少なかったのか、そのカネが古賀氏に渡ったのではないか、という質問に正対しないので、改めて質問したが、「それ以上説明することはない」の一点張りだ。
古賀事務所は締め切りまでに回答はなかった。
解散の決まった派閥に巨額の“残余金”
岸田派の「消えた558万円」は見逃してはならない重大疑惑だ。
解散を決めた岸田派以外の派閥にも巨額の残余金がある。自民党では岸田派、安倍派、二階派、森山派の4派が解散を決定し、2022年末の段階で安倍派は約1億6000万円、二階派約1億7000万円、岸田派約7833万円、森山派約2195万円、合計ざっと4億円の繰越金があった。
残ったカネを議員で山分けしたり、別の政治団体に移し替えるやり方では国民は納得しない。
各派閥(政治団体)は解散を正式決定後、30日以内に最終的な収支報告書を総務省に提出しなければならない。だが、岸田派のように裏金を実際にあった金額より少なく報告すれば、解散時の政治資金収支報告書でも「残余金」を少なく見せることができる。
総理派閥による“元親分”への還付が認められるとなれば、他派閥も残余金隠しに走りかねない。
岸田首相は疑惑発覚当初から、自分は“党を刷新する側”“安倍派を処分する側”というスタンスできたが、新たな疑惑の浮上で構図は大きく変わる。最も説明責任を果たさなくてはならないのは、岸田首相その人だ。
(了。前編から読む)
※週刊ポスト2024年4月5日号