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志穂美悦子さんの人生を彩った一品 軍人だった父と一緒に食べた「めばるの煮つけ」その思い出とレシピ

志穂美悦子さんが忘れられないごちそうとは?

志穂美悦子さんが忘れられないごちそうとは?

「最初に食べたご馳走はなんですか?」。子供の頃に母が作ってくれた料理、上京したときのレストラン、初任給で行った高級店……。著名人の記憶に刻まれている「初めて食べた忘れられない味」を語ってもらい、証言をもとに料理を再現するこの企画。今回はフラワーアーテイストの志穂美悦子さんに、忘れられないご馳走を教えていただきました。

 日本初のアクション女優を目指して、岡山県から上京。18才で映画『女必殺拳』シリーズに主演し、Sue Shiomiの名を世界にとどろかせた志穂美悦子さん。その後も、時代劇やテレビドラマなど幅広く活躍していたが、長渕剛さんとの結婚に際して、「専業主婦を望まれて……」と芸能活動を休止。以来37年、3人の子育てに全力投球してきたが、ようやく──。

 * * *
 わが家のご馳走となると、かの方(夫の剛さん)の故郷である鹿児島の味、お煮しめでしょうか。ぶりと鶏モモ、厚揚げは絶対。それに大根、にんじん、生のしいたけ、こんにゃくを日本酒としょうゆ、みりんで一気に煮込みます。砂糖を使わず、みりんで甘みを調整するのが好みですね。

 長渕家ではなく、塩見家のご馳走なら、めばるの煮つけ。陸軍中野学校を卒業した父は、インドネシアで終戦を迎えました。その後は大蔵省の印刷局に勤め、母とは職場結婚です。

 中野学校はスパイを養成する機関でしたから、家にはまだ軍服やらマントやら、カメラが仕込まれたステッキなどもありました。

 友達の家のように、流行りのグループサウンズの音楽などはかからないし、テレビはNHKとドキュメンタリー番組だけ。芸能、娯楽ものなど一切なかったですね。食事が終わると、私と弟は宿題や勉強をするよう指示されて、父と母は晩酌しながら楽しそうにおしゃべりしていました。

女優志望を伝えると父は激怒するも…

 そんな家庭でしたから、アクション女優を目指すとはとても言い出せるはずもなく。こっそり思いを記したはがきを、密かにJAC(ジャパンアクションクラブ)に出したりしていました。忘れもしません。高校2年生のある日、弟が一枚のはがきを持ってきたんです。なんと、JACが主催するオーディションの通知。郵便受けで、先に両親に見つかっていたら、とんでもないことになって処分されていたかもしれません。

 どうしても受けたかったので、夕飯の後、両親に思いを伝えました。案の定、父は激怒したのですが…驚いたのは翌日です。いきなり呼ばれて「お前の可能性の芽を最初から摘むことはしない…」と。

 じつは母は昔、宝塚歌劇団に入りたかったそうです。だから多分、父に口添えしてくれたんじゃないかと思います。その日の夕飯がめばるの煮つけ……となれば、感動のエピソードですが、この日に何を食べたのかはまったく記憶にありません。緊張しすぎて、それどころじゃなかったですよ。

 でも煮つけは、月に一度は出る大好きなご馳走でした。新鮮なめばると、千切りにしたしょうが、長ねぎを一緒に煮込む。よく考えると、こちらも砂糖を使わないので、お煮しめと似ていますね。母と祖母によるめばるの煮つけに、父が作るなすびのみそ汁、それに白いご飯が、まだ塩見だった頃の、私の晩餐です。

 いまや父が亡くなった67才を通り越しましたが、また新たな一歩が待っているような気がします。

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