能登半島地震での地割れ被害。(石川県/2024年)
つまり今年、首都直下地震が発生してもおかしくないということだ。さらに冒頭で解説した3月21日の地震が、関東地方の地下の異常事態を示唆している可能性もあるという。前出の吉岡さんが、「あくまでも仮説」と前置きした上で話す。
「過去に房総半島沖でスロースリップが発生しているタイミングで、茨城県などの内陸部で大きな地震が発生したというのは記憶にありません。今後の経緯を注視して判断する必要はありますが、そういう意味では、今回のスロースリップはこれまでとは様子が異なる可能性もある。
首都圏は3枚のプレートの上に位置しているのですが、断続的なスロースリップや群発地震、そして今回の地震はプレート全体に力がかかり、さまざまなところで“ひずみ”が限界に達していることを示唆しているのかもしれません」
スロースリップ現象やそれに伴う群発地震は、過去のケースでは2〜3週間ほどで収束している。だが、今回の群発地震がこのまま収まる気配が見られないようであれば、いよいよ関東地方で大きな地震が発生するリスクが出てくるという。
首都直下地震が発生した場合、甚大な被害が考えられるのはやはり東京だ。東京都は2022年5月、首都直下地震の被害想定を10年ぶりに見直し、公表した。そのなかで、最も大きな被害が出るケースとして挙げられたのは、品川区と大田区の境界付近を震源とする「都心南部直下地震」だ。Mは7.3で、中央区や港区など都心の11区が震度7、東京23区の6割以上の広範囲が震度6強以上の揺れに襲われる。
全壊・焼失する建物は19万4431棟、死者数は最大で6148人と想定されている。東京都は新たな被害想定報告書のなかに「災害シナリオ」も盛り込んだ。それによると、地震発生直後から広範囲で停電、断水が生じ、ガスもストップする。
「2021年に足立区で震度5の地震が発生した際、約30か所の水道管にトラブルが発生しました。その場所は5年前にも同じ規模の地震が発生しているのですが、そのときはわずか2か所だったんです。これはライフライン設備の老朽化が関係しています。東京都の想定を超える被害が生じる可能性もあります」(長尾さん)
交通網の寸断による救出・支援活動の遅れにより、震災関連死が発生するリスクも指摘されている。さらに自宅が居住困難となった人々は避難所生活を余儀なくされるが、人口密度の高い東京では、避難所のキャパシティーが足りなくなることも充分考えられるという。首都直下地震へのカウントダウンは、もう最終盤まで来ている。
※女性セブン2024年4月11日号