女子100mバタフライでパリ五輪代表に決まった池江璃花子(右)と平井瑞希=東京アクアティクスセンター(写真/共同通信社)
教育的な意義も見直され始めた
卒業文集の始まりは、大正時代まで遡るという。
「大正時代の尋常小学校から『卒業記念』というタイトルで毎年、卒業文集が発行されるようになったそうです。100年以上続く、初等教育におけるひとつの文化だといえます」(前出・教育関係者)
いまをときめく著名人たちも、卒業文集に取り組んできた。
後に日米両方の野球界で大活躍することになるイチロー(50才)は小学校の卒業文集に、こう記した。
《僕の夢は一流のプロ野球選手になることです(中略)その球団は中日ドラゴンズか、西武ライオンズです。ドラフト入団で契約金は一億円以上が目標です》
3大会連続で五輪代表に選出され、3つの五輪メダルを獲得した石川佳純(31才)も具体的な夢を思い描いていたようだ。
《私の将来の夢は、オリンピックに出ることです(中略)だれからも好かれる人になって、おめでとうと応援してもらえる選手になることです》
中学校の卒業文集に《東京五輪で金メダルが取りたい!》と綴ったのは、競泳の池江璃花子選手(23才)だ。白血病を患い、その願いは叶わなかったが、東京五輪にはリレーメンバーとしての出場を果たし、今夏に行われるパリ五輪に個人種目での出場を決めている。
「スポーツをはじめ、偉業を成し遂げた人の卒業文集を読むと、小学生の頃から自分が叶えたい夢を具体的に語っていることがわかります。手書きの文章からは書き手の個性も感じ取れますし、まさに『名作』揃いですよね。
12才の子供にとって卒業の実感は湧きにくいものですが、卒業文集を書くために6年間を振り返りお世話になった人たちのことを思い出すことは、将来を意識するいい機会になると思います」(前出・教育関係者)
NPO法人「共育の杜」で理事長を務める藤川伸治さんも、卒業文集の意義をこう語る。
「児童が自分なりに考えたことや感じたこと、気づいたことを文字として残すことはとても大切です。教員が子供と対話し、一緒に生活を振り返りながら『あのときそんなふうに思っていたんだね』『その気持ちを書き残してみたら』と、彼らのなかにある感情や学びを活字にしていけるのが理想ですね」