遥か昔、人間がまだ驕ることなく、自分たちを動物の一種として位置付ける意識が鮮明だった頃。食う時もあれば食われる時もある緊迫した平等性の中、正々堂々と彼らと渡り合っていた時代の遠い記憶。命を奪いながらも彼らを愛し、必要以上に獲ることはなく、共に栄え、歩んできた叡智。そうしたものに、僕はずっとこの手で触れていたいのだ。
そして、これだけは言える。鹿の命を奪うのがハンターであると同時に、鹿を最も尊敬し、心底惚れているのもまた、ハンターなのだと。
【プロフィール】
黒田未来雄(くろだ・みきお)/1972年、東京生まれ。東京外国語大学卒。1994年、三菱商事に入社。1999年、NHKに転職。ディレクターとして「ダーウィンが来た!」などの自然番組を制作。北米先住民の世界観に魅了され、現地に通う中で狩猟体験を重ねる。2016年、北海道への転勤をきっかけに自らも狩猟を始める。2023年に早期退職。狩猟体験、講演会や授業、執筆などを通じ、狩猟採集生活の魅力を伝えている。著書に『獲る 食べる 生きる 狩猟と先住民から学ぶ“いのち”の巡り』。https://huntermikio.com