“自力で肉を獲る人間”の存在理由

 記憶に新しい東日本大震災や、更に最近の出来事であるコロナ禍。高度なテクノロジーを発達させてきた人間社会に於いても、予想外の事態は常に発生する。その中で、肉の供給が途絶えることはないのか。

 かつて狂牛病と呼ばれたBSEや豚熱の発生、また鳥インフルエンザによる大量殺処分などのニュースが世間を賑わせている現状に対し、僕らはどう対処するべきなのか。

 そうした中、一部だけでも自力で肉を獲ることができる人間がいてもいいのではないだろうか──。

仕留めたシカをその場で解体する筆者

仕留めたシカをその場で解体する筆者

 また、養牛業界の友人から聞いた家畜の実態も、僕にとっては衝撃だった。実は、肉牛の中には乳牛が産んだものも多いというのだ。

 乳牛は妊娠していないと乳の出が悪い。そこで精液や受精卵を体内に入れ、人工的に妊娠させる。どうせ妊娠させるなら、生まれてくる子牛も人間にとって利用価値の高いものが好ましい。牛乳を得たいなら、メスと分かっている遺伝子を植え付ける。

 しかし、子牛が生まれすぎると牛舎には収まりきらない。溢れた牛の一部は、肉用として出荷される。

 副産物収益を最大化するため、ホルスタインの子宮に、黒毛和種などの受精卵が入れられることがある。DNAが黒毛和種であれば、市場に流通させる時もそう称される。代理母は誰であっても構わない。出荷時の年齢は、最高でも2年半程度だ。牛本来の寿命はおよそ20年と言われているのに対し、肉牛の一生はとても短い。

 屠畜場に送られる前、肉牛はビタミンAの摂取を制御される。サシが綺麗に入った肉を作るためだという。ビタミンAの欠乏は目に悪影響を与え、以前は失明してしまう牛もいたそうだ。

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