アメリカ・ロサンゼルスの裁判所前で、報道陣に囲まれる水原一平被告(EPA=時事)
水原が居住しているカリフォルニア州では、スポーツ賭博が違法である。現在、米国では38州で合法だが、カリフォルニア州では2022年、合法化する住民投票で否決された。ゆえにカリフォルニア州法ではスポーツ賭博に賭けた時点でアウトなのだ。にもかかわらず水原は、3年間にわたり「違法とは知らずに」賭け続けていたことになる。木曽所長が続ける。
「水原被告がこれまで所属していたドジャースにしろ、その前のエンゼルスにしろ、両チームはカリフォルニア州に所属するスポーツ競技団体です。各スポーツ競技団体は少なくとも年1回、賭博に関する講習を選手のみならず球団スタッフにも受けさせている。その講習の中でスポーツ賭博は違法だと教えられているはずなので、知らないわけがないのです。カリフォルニア州に所在している球団関係者に向けた講習の中で、違法だと伝えないのは想定できません」
違法だと「知らなかった」と公言することで、罪を軽くしようとした可能性がある、ということだ。
水原は5月14日の公判では、形式的に無罪を主張したが、現地メディアによると、来月4日の罪状認否では起訴内容を認める見通しだ。その後、数ヶ月で判決が出される予定で、大幅な減刑が見込まれている。
【プロフィール】
水谷竹秀(みずたに・たけひで)/1975年、三重県生まれ。上智大学外国語学部卒。新聞記者、カメラマンを経てフリーに。2004~2017年にフィリピンを中心にアジアで活動し、現在は日本を拠点にしている。2011年に『日本を捨てた男たち フィリピンに生きる「困窮邦人」』で開高健ノンフィクション賞を受賞。近著に『ルポ 国際ロマンス詐欺』(小学館新書)。