時代の変わり目といえば、8年前、小池百合子都知事が「崖から飛び降りる覚悟で」と言って出馬したときも、調子づいた私は、ド緑色のチュニックを着て街頭演説を聞きに行っている。おじさんたちを手玉に取っている彼女に声援を送りたくなったのよ。でもその4年後、彼女の学歴詐称疑惑が出てきて、それがスッキリ解決しないまま続投。あ〜あ、選挙って、私たちの思いとは違う力で決まるんだね。「あ〜、つまんね〜」と思いかけていたの。
そこに、トライアスロンが趣味の爽やかな独身、石丸くんが手を挙げたのよ。これを騒がずに何を騒ぐよ。
こうなると、小池百合子さんがカイロ大学を卒業したかどうかなんて、どうだっていいよ。それより、「このままでは地方の衰退が止まらなくなる。一極集中の東京を解体して分散しないと日本がもたない。これまでの政治を変える。そのために人生を賭けたい」ときっぱり言い切る男に賭けてみたくなるんだよ。
地方の衰退といえば、“乗り鉄”歴50年の私は、地方都市の駅前の景色の変遷を自分の目で見ている。この10年はガッカリを通り越して、見なかったことにしているもんね。人口減ってこういうことか、東京一極集中ってこういうことかと、揺れる電車の中でそんなことばかり考えるようになったんだよね。
石丸さんは「清き一票を私に」なんて言わない。出馬の覚悟を語った後、「みなさんの健闘を祈ります」と言うんだわ。根っからの仕事人間で安易な妥協はしないから、安芸高田市の議会では、相手が親世代であろうと、男性であろうと女性であろうと容赦なく論戦を挑んできた。それが小気味よかった。その彼が小池都知事とどんな論戦をするのかしら。いや、機を見るに敏な知事のこと。逃げるか?(5月20日時点で出馬表明はしていない)
いずれにしても、4年前まで無名だった元銀行員が都知事になるかも、ってだけで、67才の私は血の巡りがよくなっちゃう。
【プロフィール】
「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。
※女性セブン2024年6月6日号