1990年に無名塾へ参加
「現実のなかでは、なかなかあんな真っすぐには生きられないですものね。当時は、視聴者の方からお手紙もたくさんいただきました。学校に行けず、家で『はるちゃん』を見て元気をもらうと打ち明けてくれた10代のお子さん。仕事から疲れて帰ってきて、ビールを飲みながら『はるちゃん』を見てスッキリして寝るんだっていうサラリーマンの方。そういった声は本当に嬉しいし、あの役を演じる使命感のようなものも感じました。自分のお芝居で、誰かが元気になってくれるのは役者冥利に尽きますよね」
──やりがいを感じる一方で、帯放送の「昼ドラ」ならではのご苦労もあったのでは?
「出演させていただく前から、『昼ドラをやったら、もう怖いものはないよ』なんて話はよく聞いていました。主にスケジュール的な厳しさなんですが、昼ドラは30分番組で月曜から金曜まで週5回放送されます。
特に『はるちゃん』では、なんにでも首を突っ込むはるの性格上、ほとんどのシーンに私の出番がある。普通のドラマでは、主人公が出てないシーンもあるんですけど、ただそれも『ずっと出番? いいじゃん!』みたいな感じで嬉しかったです」
──『はるちゃん』では、実在する温泉街と旅館が舞台になっていました。
「ドラマでは、だいたい1週間に2組ぐらいのお客さんが来て、なにかしらのハプニングや事件が起きるんです。はるが騒動を解決し、お客さんが帰っていくのを見送るというパターンでした。ただ撮影では、1組のお客さんを『いらっしゃいませ』と迎えたら、次のお客さん、また次のお客さんと、数週間分のお迎えシーンをまとめて撮るんです。それが済んだら、今度はお客さんを見送るシーンだけを一度に全員分を撮る。事件はまだ起きていないのに、撮影ではなにかしらあったかのような表情で見送るのが大変でした(笑)」
──時系列で物語を見ている視聴者には、想像もつきませんね。
「毎日見てくださっている方は、ある意味で私たち以上に物語のなかに入り込んでくれているので、加賀・山中温泉の『翠明』(ドラマの舞台となった実在する旅館)に行ったら、本当にはるが働いていると思っている人もいらっしゃいました(笑)。舞台が変わって、北海道の登別温泉へ行っても、撮影場所で『はるちゃん、今度は登別で働くんだね!』なんて言われたりも」