ライフ

作家・岸田奈美さんのエッセイが名門校の入試に相次ぎ出題 なぜ取り上げられる?本人に見解を聞いたら…「受験生のみなさんに、ごめんという気持ち」

木々の前に立つ女性

『国道沿いで、だいじょうぶ100回』を上梓した岸田奈美さん(撮影/五十嵐美弥)

 2019年に公開したnoteが反響を呼び、初の著書『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が発売日翌日に重版、NHKで7月9日よりドラマが地上波放送されるなど注目を集める作家・岸田奈美さん。車椅子に乗る母やダウン症で知的障害がある弟との日常、岸田さんの身に起こる出来事を笑いと涙でつづる新作エッセイ『国道沿いで、だいじょうぶ100回』にも注目が集まる。その岸田さんの作品が最近、有名校の入試問題の題材として使われている。本人はそれについてどう考えているのか?

* * *

 岸田さんの作品は、京都大学医学部、灘中学校、筑波大学附属駒場中学校など、名だたる名門校の入試問題で出題されたことが話題となっている。

「学生のみなさんに向けてエッセイを書いた経験もないので、いいの? わかるかな? と思いました。ロジックや論理を気にせず書いているので、辻褄とか大丈夫そう?って。

 入試問題で出題されるだけでなく、TikTokで私の文章を載せた動画がバズったことで、10代の若者との距離が近くなったように感じます。多いものだと300万回以上再生されているのですが(※2024年6月現在)、驚いたことに『めっちゃ泣いた! ところで、エッセイって小説?』といった内容のコメントが多いんです。

 たしかに10代の学生にとって、エッセイってなんだかイメージしにくいですよね。解き方のコツを入試対策として学ぶのに、評論や小説と違ってエッセイは意外とノーマークですよね。著者である私自身が入試問題を解いても難しいなと思ったほどなので、きっと受験生やその親御さんから『エッセイの仕組みを知っておいて慣れておかないと、急に出たらわからんぞ』と注目していただいたんじゃないかあと思うと、面白い経験でした。

 私自身は『みんなを笑わせたろ』という気持ちで書いていたのに、教育的な意味を持ったことが驚きだったし、うれしい気持ちになりましたね」(岸田さん・以下「」同)

ソファに座り、話す女性

自身のエッセイが難関校の受験問題として出題されることをどうとらえている?(撮影/五十嵐美弥)

障害者=感動ではないテーマが社会とマッチした

 はじめは本人も驚いたと言うが、岸田さんの作品はなぜこんなにも入試で出題されるのか。

「私自身、そのことを聞いたときには信じられなくて、担当編集者に『入試問題で扱われるだなんて、ありえなくないですか?』と聞いたんです。編集さんからは『文体やたとえ話は今風だけど、書かれてあることは普遍的かつ知っておかないといけないことだから、現代では大切。福祉や、障害のある人やマイノリティーへの対応、教養としての価値があるから、岸田さんのエッセイは入試に出しやすいのかも』と言っていただいて、腑に落ちました。

 特に医学部は患者さんの気持ちや医療的なケアを考えないとならないし、そこで適性を見ることが必要ですよね。中学生にとっても、これから福祉について知っておくことは大事だから、時事問題として出しやすいのかもしれません。

 社会が今、バリアフリーのことや障害者、自分からは想像できない人の気持ちを考えましょうという流れになっているのだと思います。アルバイトをする、会社に入るといった社会に出ていく立場になったときに、障害者=感動の対象ではなく共生する視点が必要だという世の中へのメッセージなのかなと」

岸田奈美が考える「受験生に必要な力」

 岸田さんは、自身の作品が取り上げられた入試問題を、自信を持って解けなかったという。担当編集者と解答を導き出す過程で、受験生に必要な力に気づいたと話す。

関連キーワード

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン