「レフェリーはフットワークが命です」

 服装は「蝶ネクタイに白シャツ」と規定されている。ネクタイは自前で用意するが、白シャツは支給される。試合会場には白シャツを必ず2枚持っていくという。

「出血を伴うことが多い競技ですから、レフェリーをやると選手の血がシャツに飛んでくる。1日に8試合あればレフェリーを2試合務めるので、着替えのシャツは必須なんです」

 レフェリーの運動量は凄い。世界戦ともなれば3分×12ラウンドを選手とともに18〜24フィート四方のリング上を動き回る。健康管理も大変だ。

「毎朝ウォーキングをして、休みの日にはランニングをしています。レフェリーはフットワークが命です。

 あとは動体視力。研修ではボクシングの練習で使うパンチングボールを使ったりしますが、時間があれば遠くを眺め、走っている車のナンバーを見るのもトレーニングのひとつです。懸垂も毎日やっている。会社に手作りの鉄棒があって、時間があればぶら下がります。運動量と判断力を落とさない努力を続けています」

 60歳を過ぎたマーチンには過酷にも思えるが、「実は60歳を超えた今がレフェリーとしてのピークだと思う」と語る。

「レフェリーでもジャッジでも、どれだけ多くの試合をさばいてきたかの経験が重要です。それにフットワークは審判を始めた頃と変わらない。もともと足を使うボクサーだったというのもプラスになっている。引退後にレフェリーのオファーをもらえたのも、現役時代のスタイルがあったからだと思う。今でも選手たちのスピードにしっかり対応できます」

 JBCの規定では審判員の定年は70歳。2007年までは定年の規定はなく、判断力が落ちなければ何歳でも続けることができた。世界戦で97試合のレフェリー・ジャッジを務めた森田健は、定年制度ができる前の05年に70歳で審判生活にピリオドを打った(その後、JBCの審判委員長、事務局長などを歴任)。

「レフェリーにはジャッジング、レフェリング、フットワークが求められますが、やはり70歳になると肉体的な衰えが出てくるのだと思う。体力を維持できるかどうかが大事になってくるだろうが、オファーをもらえる限りは審判員を続けたいですね」

第2回に続く

※『審判はつらいよ』(小学館新書)より一部抜粋・再構成

【プロフィール】
鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。『週刊ポスト』記者として、スポーツ、社会問題を中心に幅広く取材活動を重ね、特に野球界、角界の深奥に斬り込んだ数々のスクープで話題を集めた。主な著書に金田正一、長嶋茂雄、王貞治ら名選手 人のインタビュー集『巨人V9 50年目の真実』(小学館)、『貴の乱』、『貴乃花「角界追放劇」の全真相』(いずれも宝島社、共著)などがある。ボクシングレフェリーのほか、野球、サッカー、大相撲など8競技のベテラン審判員の証言を集めた新刊『審判はつらいよ』(小学館新書)が好評発売中。

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