写真は、小学5年生の奥田さん。「おふくろには、一度だけ叱られたことがあります。大学でふらふらしていたとき、一丁前の口をきいたらパシッと横面を張られて…あれで心を入れ替えました」(奥田さん)。
上京して浮上したカレーの謎
ルーは、愛知の定番オリエンタルカレー。サイコロ状に切った豚肉、じゃがいも、それに玉ねぎ。ぼくが苦手にしていたにんじんは入っていません。そこに、コーミソースのウスターソースを、しゃっと1往復半ほど。ジャバジャバはいけませんよ。そう、おふくろが漬けたラッキョウも添えてありました。
このライスカレーと、みそ汁の組み合わせが堪えられないんです。薄い豚バラに、ささがきのごぼう。当然、赤みそ。あの頃、仕事終わりのブルーカラーの人たちは、近所の酒屋さんで赤みそをつまみに日本酒をくいっとやってね。
学校給食では出なかったので、17才までぼくが知っていたカレーは、おふくろのだけでした。その後、上京してから大学の学食やお店でカレーを食べましたが、やっぱり好きなのはおふくろの味。いちばん気になったのは、東京のカレーがどれも安かったことです。材料やら何やらにお金がかかるから、誕生日とクリスマスしか食べられないと思っていたけれど、どうも違う。
それで帰省したときに聞いたんです。「どうして、うちではカレー出てこうへんのだで」。すると、おふくろが「うーん」と言葉に詰まって、ほどなく「あかんわ、私が嫌いだで」。ようやく、謎が解けました。