スポーツ

【夏の甲子園「大番狂わせ」名勝負】2022年に一強・大阪桐蔭を破った下関国際 綿密な対策から生まれた「三重殺」

下関国際5-4大阪桐蔭 遊撃手からマウンドに上がった仲井慎の好フィールディングが奏功した

下関国際5-4大阪桐蔭 遊撃手からマウンドに上がった仲井慎の好フィールディングが奏功した

 8月7日に開幕する夏の甲子園大会。長い歴史のなかには、誰もが優勝候補筆頭にあげられる強豪校が、意外な形で敗れる“ジャイアントキリング”は高校野球ファンなら忘れられないだろう。2002年、強豪・大阪桐蔭(大阪)を破った下関国際(山口)の選手に、当時を振り返ってもらった。

 * * *
 2018年夏、下関国際は2度目の甲子園でベスト8に進出した。その姿に憧れて入学した2022年夏のナインは、「先輩越え」を目標に2年半を過ごしていた。

 先輩越えがかかる甲子園の準々決勝の相手は強豪・大阪桐蔭だった。

 遊撃手ながら、終盤にはマウンドに上がって試合を締めくくる重大な役割を担った仲井慎(現駒澤大)が振り返る。

「大阪桐蔭のような学校に勝てなければ、ベスト4以上の景色を見ることはできない。だから春以降はずっと大阪桐蔭の動画を見て、どんな野球をやってくるのか頭に入れ、あらゆる対策を体に染みこませていました」

 坂原秀尚監督が練習でこだわったのが、バント処理などの細かなサインプレーであり、投手と内野手の連係だった。

 3対4の劣勢で迎えた6回裏、仲井がマウンドに上がると、情勢は大きく下関国際に傾く。命運を分けたのは7回裏、無死一、二塁のピンチ。

 大阪桐蔭のバントが明確に想定されるケースで、同校の西谷浩一監督は2ボールからバントエンドランのサインを出した。だが、それが仇となった。バントはポップフライとなって仲井のグラブに収まり、仲井から二塁、そして一塁へと送られて三重殺が成立したのだ。

「さすがにトリプルプレーの練習はしたことがありませんでしたが(笑)、大阪桐蔭を追いかける展開を想定して日頃からケースバッティングなどに取り組んでいました。それが実った試合でした」

 強豪・大阪桐蔭に5対4で勝利した下関国際は準優勝。仲井は駒澤大進学後は投手専任となり、プロを夢見ている。

取材・文/柳川悠二

※週刊ポスト2024年8月9日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

「新証言」から浮かび上がったのは、山下容疑者の”壮絶な殺意”だった
【壮絶な目撃証言】「ナイフでトドメを…」「血だらけの女の子の隣でタバコを吸った」山下市郎容疑者が見せた”執拗な殺意“《浜松市・ガールズバー店員刺殺》
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
【体にホチキスを刺し、金のありかを吐かせる…】ルフィ事件・小島智信被告の裁判で明かされた「カネを持ち逃げした構成員」への恐怖の拷問
NEWSポストセブン
グラドルデビューした渡部ほのさん
【瀬戸環奈と同じサイズ】新人グラドル・渡部ほのが明かすデビュー秘話「承認欲求が強すぎて皆に見られたい」「超英才教育を受けるも音大3か月で中退」
NEWSポストセブン
2人は互いの楽曲や演技に刺激をもらっている
羽生結弦、Mrs. GREEN APPLE大森元貴との深い共鳴 絶対王者に刺さった“孤独に寄り添う歌詞” 互いに楽曲や演技で刺激を受け合う関係に
女性セブン
無名の新人候補ながら、東京選挙区で当選を果たしたさや氏(写真撮影:小川裕夫)
参政党、躍進の原動力は「日本人ファースト」だけじゃなかった 都知事選の石丸旋風と”無名”から当選果たしたさや氏の共通点
NEWSポストセブン
セ界を独走する藤川阪神だが…
《セの貯金は独占状態》藤川阪神「セ独走」でも“日本一”はまだ楽観できない 江本孟紀氏、藤田平氏、広澤克実氏の大物OBが指摘する不安要素
週刊ポスト
「情報商材ビジネス」のNGフレーズとは…(elutas/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」は“訴えれば勝てる可能性が高い”と思った》 「情報商材ビジネス」のNGフレーズは「絶対成功する」「3日で誰でもできる」
NEWSポストセブン
入団テストを経て巨人と支配下選手契約を結んだ乙坂智
元DeNA・乙坂智“マルチお持ち帰り”報道から4年…巨人入りまでの厳しい“武者修行”、「収入は命に直結する」と目の前の1試合を命がけで戦ったベネズエラ時代
週刊ポスト
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン