亡くなった父親が夢の中で女性にくれたという、貝をモチーフにしたブローチ。同じものを旅先で見つけた時は息をのんだという
亡父の愛がブローチになって…
このように、残された親族に故人がメッセージを伝える逸話は多いという。
「こんな話も聞きました。大阪に住む60代の女性が30代半ばの頃のことです。大好きな父親ががんで急逝し、気持ちの整理がつかずに数か月間、涙に暮れて過ごしていたそうです。そんなある日、父親が夢の中に出てきて、病院のパジャマを着たまま、薄暗いところに立っていたそうです。女性が“お父さん大丈夫?”と聞くと、生前、病巣があった胸部に手を当てつつも、“大丈夫やねん。どっこも痛くないで”と笑っている。安堵する女性に対し父親は、“これをあげようと思って”と、ブローチを渡してくれたそうです。貝を2枚重ねた印象的なデザインでした。
生前の父親は、出張などに出るたび、妻や娘にアクセサリーを買ってきてくれたのを思い出し、女性も“ありがとう”と受け取ったそうです。その日以降、悲しみが少しずつ癒えていき、日常を取り戻していったといいます。
その後、家族で旅行に行き、ふらっと入ったデパートに父親が夢の中で見せてくれたものと同じブローチがあったといいます。驚きながらも店員にその夢のことを伝えると、“これは半年ほど前から陳列しているので、もしかするとお父様がご存命のときに、ご覧になったのかもしれません”と話してくれたそうです。
女性はそのブローチを購入し、それから30年近く経ったいまも大切に使っています。使うたびに父親のことを思い出すそうです」
こういった故人からのメッセージは多々あり、特に夢に現れてメッセージを伝えるパターンをよく聞くと深津さんは言う。
「肉体を失っても、魂はこの世に残っていて、何かしらの現象を起こしているのではないでしょうか」
霊的現象を体験しても、必要以上に怖がることはないという。霊が何を伝えようとしているのか、知り合いならば、故人の生前の言動を振り返って思いをはせてみたらいいのかもしれない。それがまたいい供養になりそうだ。
【プロフィール】
深津さくら/京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)在学中から実話怪談を研究。2018年より怪談師として活躍。YouTube『おばけ座』で怪談を配信。著書に『怪談まみれ』(二見書房)など。
取材・文/前川亜紀
※女性セブン2024年8月8・15日号