ボクシング女子66キロ級で金メダルを獲得したエイマヌン・ハリフ(中央、アルジェリア)はインターネット上で性別について誹謗中傷を受けたとして、パリの検察当局に告訴した(dpa/時事通信フォト)

ボクシング女子66キロ級で金メダルを獲得したエイマヌン・ハリフ(中央、アルジェリア)はインターネット上で性別について誹謗中傷を受けたとして、パリの検察当局に告訴した(dpa/時事通信フォト)

攻撃的なコメントが急に相次いだ

 球技でパリ五輪に出場した日本人選手をバックアップしていた、メディカルトレーナーの男性・Bさん(40代)は、競技終了後に選手のSNSアカウントへ向けて「お礼」を投稿したが、思わぬ騒動に巻き込まれたと肩を落とす。

「残念ながらメダル獲得には至りませんでしたが、ここまで選手を応援してくれた人たち、地元の人たちに向けて、SNSにお礼というか、メッセージを書いたんです。多くの人から激励のメッセージをいただきまして、私も頑張ってよかったといろんな思いが去来して涙しました。早く選手をねぎらってあげたい、早く次の目標に向かう選手をサポートしたいと。前向きな気分でね」(Bさん)

 ところが、書き込まれた数十件の激励コメントの中に、たった一つだけBさんや選手を攻撃する内容のものが投稿され、空気は一変する。

「私やコーチングスタッフのせいで負けた、やめろ、引退しろ、というような書き込みでしたね。最初は無視していたんですが、そこに別の人が“私もそう思う”的な返信をして、そこから荒れだしたんです。ありがとうじゃないだろう謝罪しろとか、反省して練習しろとか、攻撃的なコメントが急に相次ぎました」(Bさん)

 まさに眺めている目の前で、選手をねぎらおうというSNS上の空気が一変したとBさんは振り返る。そして、自分の身に起きた理不尽な炎上に納得がいかないのは当然だが、パリ大会期間中、惜しくもメダルを逃したり、思うような成果を残せなかった選手たちが「ごめんなさい」と口にすることも、苦々しく感じていると打ち明ける。

「結果が出せなかった選手たちが、ごめんなさい、すいませんと謝っている姿に、胸が張り裂けそうな思いでした。選手たちのほとんどは、テレビカメラの前だということを意識して話しているのではなく、コーチやチームスタッフ、家族や友達など、競技生活を支えてくれた人たちに対して、期待に応えられなかった申し訳なさを言っていると思うんです。でも、テレビを見た人たちからは、自分たちファンに、日本人に対して謝っている、と間違って理解されている気がします。だから、うまくいかない選手に謝れ、という人が出てくる」(Bさん)

 アスリートや関係者への誹謗中傷は、日本人選手関係だけでなく世界中で起きている。メダルをとれなかったこと、人種や性別、見た目についてなどに関する悪質な投稿が次々と発信され、五輪の組織委員会や各国の選手団だけでなく、政治家たちも苦言を呈するような事態だ。日本選手団は大会期間中に発表した声明で、法的措置も検討していると明かしているが、被害に遭っているまさにいま、効き目がある対策は打てないままだ。結果、多くのアスリートがSNS投稿を控えるなどして、誹謗中傷被害にあわないよう、情報発信すらやめてしまう動きも見せている。

 当たり前の話として、誹謗中傷はその言葉を発する人が悪い。言われ、投稿され、名指しされた側が何かを制限されるなんて、本来はあってはならないことだ。だが現実には、一部の卑劣な人々の言動が、他の多くの人たちの表現活動が抑え込まれている。そして、我々の知る権利まですでに脅かしているのだが、そんな危険な状態に陥っていることを、多くの人が気づけていないのが現状であろう。

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