『地面師たち』らしく工事現場の前での一枚(撮影/小倉雄一郎)
──舞台からテレビや映画に、メインの活動の場を移されたのには、なにか理由があったのでしょうか?
「42歳のときに胃がんを患い、胃を全摘したんです。それで、失意のままに劇団を辞めてしまいました。劇団には総務のような仕事もあるから残ったら、と引き留めてくれたのですが、それまで役者をやっていたのに、他の役者が楽しそうに演じる姿を横目で見ながら、自分は舞台に立てないなんてつらいですから、続ける気持ちになれませんでした」
──若くして胃を全摘とは、言葉では表現できないほどの苦しみがあったと想像します。どのように乗り越えられたのでしょうか?
「入院治療をしながら、病院を抜け出し毎日のように映画を観ていました。病院の白い壁に囲まれていると閉塞感が強く、ただ何かをしたくて。発想の転換ですね。退院後は米国を1カ月放浪してミュージカルを観たり、欧州へ1か月行ってスペインのサグラダ・ファミリアを観たりしていました。
旅が好きですね。つい先日、NHK BSプレミアム4Kで放送されたドラマ『母の待つ里』は岩手県の遠野でロケだったので、1日オフの日には共演の女優・中島ひろ子さんを連れて中尊寺にドライブしました。あちこち行けるのは楽しいです」