街中で声を掛けられたことは、インタビュー時点ではないという(撮影/小倉雄一郎)
──それでも役者を続けたのはなぜでしょう。
「40歳を過ぎて転職するのは難しいですから。映像の世界で役者を続けようと、エキストラから再スタートし、ここまで続けてきました」
──これからの目標を聞かせてください。
「声をかけてくれる監督さんが何人かいるので感謝しながら、これからも続けていきたいですね。願いとしては、役者の仕事で食べていけるようになることです。
劇団時代は劇団から給料が出ていましたから、その後は貯金を切りくずしたり、飲食業やコンビニ、ヤマト運輸などのアルバイト、姉からの援助で何とかやってきました」
──俳優の仕事は予定が立てづらいので、定期でアルバイトをするのが難しいと聞きます。
「今年はじめについに貯金が底をつき、今は借金生活です。だから、一番ほしいのは仕事ですね。出演作は多いですが、“ワン・デイ、ワン・シーンの役者”だから、スケジュールは白い日も多い。そんな日はテレビでドラマやスポーツを楽しみ、住んでいる団地の自治会の役員として中庭の草むしりをして身体を動かしています。『作品みましたよ』と声をかけられることは、まだありませんよ(笑)」
これから大きく羽ばたく予感はじゅうぶん。街で声をかけられることが増えていくことだろう。
(了。前編から読む)
【プロフィール】
五頭岳夫(ごず・たけお)/1948年新潟県北蒲原郡水原町(現・阿賀野市)生まれ。高校卒業後、上京。自動車整備士を経て劇団「青年劇場」入団。劇団員として活動しながら、『砂の器』『八甲田山』などの大作映画に出演した。42歳で劇団を退団。2000年にエキストラとして再スタートし、2007年から本格的に映像作品に出演。映画『凶悪』『教誨師』などで存在感を示し、2024年、Netflixドラマ『地面師たち』で人気に。
(取材・文/中野裕子)