“ツラいさん”を越えて
一方で5月には、選手会長で開幕4番を任せた堂林翔太(33)を二軍に落とした。打撃不振が原因と報じられたが、達川氏は内幕をこう明かす。
「堂林は新井監督が現役時代から可愛がっていた選手ですが、守備や走塁で怠慢プレーが目立ったため、二軍に降格させたんです。懲罰人事をしない彼が、怒って選手を二軍に落とした唯一のケース。堂林は二軍で若手に交じって泥だらけでプレーしていました」
降格から1か月後、堂林は同じ中京大中京出身で育成2位の新人・佐藤啓介(23)とともに一軍に昇格。直後の試合で新井監督は堂林ではなく、佐藤をスタメン起用した。
「誰もが驚きましたが、堂林は腐ることなく、ベンチから身を乗り出して大声でチームを鼓舞した。その姿を見た新井監督は次の試合から堂林を使い始め、堂林も期待に応えて8月に入って成績をグンと伸ばした。“叱らない”を基本としながら、人の使い方も非常に上手いよ」(達川氏)
ドラフト6位入団の苦労人で、広島から阪神に移籍した際はスタンドから凡退時に“ツラいさん”と呼ばれるなどした経験も、今に繋がっている。スポーツ紙デスクが言う。
「阪神時代の2008年、北京五輪後に疲労骨折が発覚し、当時の岡田彰布監督(66)からV逸の戦犯として名指しで批判された。それを反面教師として選手を絶対に悪く言わないようにして、“信じて任せて、結果はすべて監督が負う”という姿勢で指揮を執っているといいます」
今季のペナントを制した時、“天然”や“イジられ”が令和の名将の新条件となるのだろうか。
※週刊ポスト2024年9月13日号