ライフ

【新刊】続編はシンガポールの若き富豪が標的に『地面師たち ファイナル・ベッツ』など4冊

シンガポールから釧路へ。スタッカートの効いた構成で一気読み

シンガポールから釧路へ。スタッカートの効いた構成で一気読み

 厳しい残暑の中で疲れがなかなか抜けないこの時期こそ、無理せずゆっくりと読書する時間を確保してみては? 充実の読書タイムをもたらす注目の新刊を紹介する。

『地面師たち ファイナル・ベッツ』新庄耕/集英社/1980円
 前作同様の面白さ。地面師とは土地の所有者になりすまして巨額のカネを詐取する詐欺師のことで、元締めハリソン山中の人当たりのいい冷血ぶりにも磨きがかかる。バカラで一文無しになった元Jリーガーやハニートラップ係のマヤらが釧路の土地を巡り、シンガポールの若き富豪を標的にする。カネ、セックス、暴力、野心。人はどこで“墜落”するのか。キレのいい群像劇でも。

『義父母の介護』村井理子/新潮新書/924円
 義母が認知症に。義父母の介護は嫌だったが覚悟する。理由は二つ。物書きとしての好奇心、義父が義母に不満を募らせるのに義憤を感じたこと。とはいえフリーの仕事もあれば双子の高校生男子の世話もある。運転免許証返納や老夫婦にもある男女の嫉妬心、実子(夫)の出番の時期など“嫁”の気持ちを正直に綴った介護記に、よくぞ言ってくれたと共感を持つ人も多いはず。

陰キャラの義父、陽キャラの義母。介護はキャラ由来の難事の連続なのかも

『義父母の介護』村井理子/新潮新書/924円
 義母が認知症に。義父母の介護は嫌だったが覚悟する。理由は二つ。物書きとしての好奇心、義父が義母に不満を募らせるのに義憤を感じたこと。とはいえフリーの仕事もあれば双子の高校生男子の世話もある。運転免許証返納や老夫婦にもある男女の嫉妬心、実子(夫)の出番の時期など“嫁”の気持ちを正直に綴った介護記に、よくぞ言ってくれたと共感を持つ人も多いはず。

2022年のミステリーベスト10で第1位になった評判作が文庫に

2022年のミステリーベスト10で第1位になった評判作が文庫に

『方舟』夕木春央/講談社文庫/913円
 大学時代の仲間7人で廃墟の地下建築で一夜を過ごすことになった柊一。そこに迷った3人家族も加わるが、朝の地震で入り口が塞がれ、水も浸入する”逆方舟”に。その矢先に殺人が起こり、第二、第三の殺人も。水没までのタイムリミットサスペンスに犯人探しが加わる本格ミステリー。有栖川有栖氏絶賛だが仕掛けの妙より救いのある人間ドラマが読みたいという読者もいそう。

出戻り風祭警部や天然キャラの新人も。推理の賑やかしが増えて、ますます快調

出戻り風祭警部や天然キャラの新人も。推理の賑やかしが増えて、ますます快調

『新 謎解きはディナーのあとで』東川篤哉/小学館文庫/902円
 大人気ユーモアミステリー。「新」とあるのは、財閥令嬢にして刑事の宝生麗子に可愛い後輩ができたのと、栄転したはずの風祭警部が国立署に出戻り推理の賑やかしが増えたから。血文字のダイイング・メッセージ、5つの目覚まし時計の謎など、麗子の運転手兼毒舌執事の影山の推理が冴える5編。誰? 櫻井翔主演のTVドラマで十分とか言ってる人は。活字も面白いのだ。

文/温水ゆかり

※女性セブン2024年9月12日号

関連記事

トピックス

ミスタープロ野球として、日本中から愛された長嶋茂雄さんが6月3日、89才で亡くなった
長島三奈さん、自身の誕生日に父・長嶋茂雄さんが死去 どんな思いで偉大すぎる父を長年サポートし続けてきたのか
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
金髪美女インフルエンサー(26)が “性的暴力を助長する”と批判殺到の「ふれあい動物園」企画直前にアカウント停止《1000人以上の男性と関係を持つ企画で話題に》
NEWSポストセブン
逮捕された波多野佑哉容疑者(共同通信)。現場になったラブホテル
《名古屋・美人局殺人》「事件現場の“女子大エリア”は治安が悪い」金髪ロングヘアの容疑者女性(19)が被害男性(32)に密着し…事件30分前に見せていた“親密そうな様子”
NEWSポストセブン
マッチングアプリぼったくり。押収されたトランプやメニュー表など。2025年5月15日、東京都渋谷区(時事通信フォト)
《あまりに悪質》障害者向けマッチングアプリを悪用した組織的ぼったくりの手口、女性がターゲットをお店に誘い出し…高齢者を狙い撃ちする風俗業者も
NEWSポストセブン
ブラジル公式訪問中の佳子さま(時事通信フォト)
《佳子さまの寝顔がSNSで拡散》「本当に美しくて、まるで人形みたい」の声も 識者が解説する佳子さま“現地フィーバー”のワケ
NEWSポストセブン
天皇皇后両陛下の「慰霊の旅」に同行された愛子さま(写真/共同通信社 )
愛子さま、皇室とご自身の将来との間で板挟み「皇室と距離ができればこうした仕打ちがある」という前例になった眞子さんの結婚 将来の選択肢を“せばめようとする外圧”も 
女性セブン
“じゃないほう”だった男の挑戦はまだまだ続く
「いつか紅白で『白い雲のように』を歌いたい」元猿岩石・森脇和成が語る有吉弘行との「最近の関係性」
NEWSポストセブン
白鵬の活動を支えるスポンサー企業は多いと思われたが…
白鵬「世界相撲グランドスラム」構想でトヨタ以外の巨大スポンサー離反の危機か? “白鵬杯”スポンサー筆頭格SANKYOは「会見報道を見て知った。寝耳に水です」
週刊ポスト
6月13日、航空会社『エア・インディア』の旅客機が墜落し乗客1名を除いた241名が死亡した(時事通信フォト/Xより)
《エア・インディア墜落事故》「ボタンが反応しない」「エアコンが起動しない」…“機内映像”で捉えられていた“異変”【乗客1名除く241名死亡】
NEWSポストセブン
ロスで暴動が広がっている(FreedomNews.TvのYouTubeより)
《大谷翔平の壁画前でデモ隊が暴徒化》 “危険すぎる通院”で危ぶまれる「真美子さんと娘の健康」、父の日を前に夫婦が迎えた「LAでの受難」
NEWSポストセブン
来来亭・浜松幸店の店主が異物混入の詳細を明かした(右は来来亭公式Xより)
《“ウジ虫混入ラーメン”が物議の来来亭》店主が明かした“当日の対応”「店舗内の目視では、虫は確認できなかった」「すぐにラーメンと餃子を作り直して」
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン