強靭な縁切り効果を持つ「絶縁神社」を舞台に、そこに訪れる人の葛藤と欲望を描く大人のダークファンタジー
「縁切り」には覚悟が必要
どんなことをしてでも悪い縁から逃れたい──強い気持ちは時として暴走し、思わぬ事態を引き起こす。
「取材などで各地の縁切り神社や寺を訪れますが、『妻と離婚させてほしい』『イヤな上司を遠くの支社に飛ばしてほしい』といったものならまだいいが、『夫の不倫相手を殺して』『姑、早く死ね』など物騒な内容もある。
しかしほとんどの絵馬には氏名、年齢、所在地を書いて、プライベートな願いを記載するようになっています。昔と違って怖いのは、個人情報が不特定多数の目に触れ、ネットで簡単にさらされる可能性があるということ。ここ数年で、はがきに貼るような『個人情報保護シール』を絵馬に貼る神社も増えていますが、数でいえばまだまだ少ない。ネガティブな祈願内容であるほど、気をつけるべき時代になっています」(鵜飼さん)
また、願いがかなっても思わぬ犠牲が生じるリスクがある。実際、「上司との縁切りを願ったら、私が解雇された」などというエピソードも珍しくない。
『縁切りエマ』の作中でも、エマは参拝者に「どんな形で縁が切れるか、その方法は選べない」と忠告する。
「“人を呪わば穴二つ”ということわざが示すように、ネガティブな願いをかなえるには、それなりの覚悟が必要です。作品を通して、読者の皆様が自らの悪縁と向き合い、本質を見極めてどう断ち切るか考えるきっかけになってほしい」(とらふぐさん)
※女性セブン2024年9月19日号