国際情報

《韓国では知り合いの写真や卒アルから作成、拡散も》一般人も未成年も被害者となるディープフェイク性犯罪の卑劣さ 元アイコラ職人「タガが外れたなという感じ」

韓国、ソウルで行われたディープフェイクを用いた性犯罪への積極的対策を求める緊急集会(AFP=時事)

韓国、ソウルで行われたディープフェイクを用いた性犯罪への積極的対策を求める緊急集会(AFP=時事)

 8月末、フランス・パリの空港でテレグラム創設者であるロシア出身の大富豪、ドゥロフ容疑者が違法送金や児童ポルノ、詐欺、当局への情報開示拒否などサイバー犯罪捜査の一環で逮捕された。日本よりも身近な脅威に影響があるニュースとして受け取ったのは、韓国の人たちかもしれない。米国のセキュリティ会社の調査によると、人工知能(AI)で作られた本物のような偽コンテンツ、いわゆるディープフェイクによるわいせつ動画などの約半数に韓国人が登場するというのだ。その多くはテレグラムを通じて拡散されている。ライターの宮添優氏が、日本にとっても対岸の火事とは言えない、一般人が被害に遭うディープフェイクの現在についてレポートする。

 * * *
 いま韓国国内で、大量のディープフェイク画像や動画がSNSで拡散され、大きな社会問題となっている。投稿と拡散に使われているのは、設定した時間が経つとメッセージやファイルを自動消去できるなど、高い秘匿性が特徴とされるアプリ「テレグラム」だ。特徴を悪用して、特殊詐欺グループやテロ組織が利用していることでも知られているが、そのテレグラムを舞台に、小中高生など未成年も含む一般人の女性たちの顔写真を、AIで性的な画像や動画と合成させたディープフェイク・ポルノが大量に流布されているのだ。

 尹錫悦大統領が撲滅を指示するほど韓国で蔓延しているディープフェイク・ポルノは主に、テレグラムのグループ機能やチャンネル機能を利用して共有・拡散されている。「チャンネル」で発言できるのは管理者だけだが、参加できるユーザー数が無制限ということもあり、ニューヨークタイムズなどの報道機関や、ウクライナのゼレンスキー大統領やロシア外務省が公式に利用するほど便利なものだ。しかし、それを悪用して女性教師専門、看護師専門などとうたうチャンネルをつくり、それぞれ数百人から数千人のユーザーが参加してわいせつ画像や動画の共有、拡散の後押しをしていたのが韓国の事件だという。事件を取材している大手紙外信部記者が説明する。

「チャンネル内にはかなり生々しい、実在する女性の写真や映像を使ったフェイクコンテンツが溢れており、日本のアダルト作品を使って、顔だけをすげ替えたようなものまで確認できます。チャンネルの参加者は、互いに知り合いの写真やビデオ、卒業アルバムなどの写真を実名を含む個人情報付きでディープフェイクを作成に投げて、そのユーザーが作成したものを投稿する、という流れのようです。中には、勤務先や学校がある程度割れてしまい、身元を特定されてしまうような被害もあるようです」(外信部記者)

 チャンネルにはディープフェイクを使って本物と見紛う動画を作成する職人のようなユーザーが参加しており、彼らに元画像を添付して作成を依頼し、完成したものを披露する、というやりとりがさかんに行われていた。勝手に写真を使われた未成年を含む多くの女性たちが、いつのまにか何万、何十万、いやもっと多くのユーザーにコンテンツとして消費され、デジタル性犯罪の被害者となっている。

 デジタル性犯罪といえば韓国では、2020年に複数の逮捕者が出た「n番部屋事件」と呼ばれる性的搾取・暴行事件が起きている。このときはディープフェイクこそなかったが使用されたツールは主にテレグラムで、複数のチャットルームが犯罪の舞台となっており、その代表的な存在が俗に「n番部屋」と呼ばれていたため、この一連の事件に対する名前として定着している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン
中居正広氏の騒動はどこに帰着するのか
《中居正広氏のトラブル事案はなぜ刑事事件にならないのか》示談内容に「刑事告訴しない」条項が盛り込まれている可能性も 示談破棄なら状況変化も
週刊ポスト