午後はまわしをつけて土俵での稽古。チューブを使った準備運動から始まる。四股やすり足にもオリジナル性を高めている
立ち合いは省略
部屋に戻ってちゃんこを食べ、午後3時からは土俵での稽古となる。
まずはチューブを使ったカニ歩きから始まる。四股も踏むが片足を上げて30秒ほど静止する形で行なわれる。申し合いも四つに組んだ状態で始まり、立ち合いでの当たりは省略されている。
不利な体勢からスタートすることでまき替えなどの技術を習得できるという。すべてが従来の相撲部屋の稽古にないオリジナルメニューだ。
「相撲も取りますが1日数番。現役時代から相撲を取るための筋肉、いわゆる“相撲筋”を鍛えたいと思っていた。組み合った状態から始めれば技術を覚えるだけでなく、体幹を支える筋肉も鍛えられる。人はマンネリするので刺激を少しずつ増やす工夫もしている。四股は4パターン、すり足も3パターンある」
“心理的安全性”
2時間の稽古中、笑い声が飛び交い、親方から笑顔が絶えない。現役引退後、大学でアスリートのセカンドキャリア支援カリキュラムで“心理的安全性”を学んだ。
「心理面で安全性があると傍にいても緊張しない。師弟がこのような関係でなければ悩みを打ち明けたりしないという。コーチ役の師匠に質問もできないようでは力士が強くなれず、相談できる環境を常に作っておきたい」
夕食後は自由時間となる。酸素カプセルやトレーニング機器を使う力士もいるが、中村部屋では門限がない。弟子の監視が厳しい相撲部屋では異例のことだ。
「消灯は11時と決まっているが、未成年力士以外には門限を作っていない。ただ監督責任のある私に帰宅時間を連絡するルールになっているし、稽古や掃除などに支障をきたすようなら門限を作ると伝えている。親方の威厳で縛らず、信頼で縛りたいのです」