国内

郊外で相次ぐ闇バイトグループによるロレックス強盗事件 思慮の浅い者たちが犯罪に加担することによる「危険な兆候」

警視庁千住署が実施した「闇バイト」の危険性を伝える防犯講話。「甘い言葉にだまされないで」などと訴えた(時事通信フォト)

警視庁千住署が実施した「闇バイト」の危険性を伝える防犯講話。「甘い言葉にだまされないで」などと訴えた(時事通信フォト)

 近ごろはアルバイトに応募するとき、自分の身分証の写真をLINEなどで送信することも珍しくないそうだ。そのためか、その応募先が闇バイトであっても抵抗なく免許証などの画像を送ってしまう。その結果抜けられなくなり、よく考えないまま闇バイトに加わった人たちが起こしている最近の犯罪は、社会にとってどんな脅威なっているのか。ライターの宮添優氏が、思慮が浅い者たちによる強盗事件の増加についてレポートする。

 * * *
「正直、またかという印象です。毎日のように報じられているのに、まだ闇バイトに騙されるようなレベルの若者がこれほどいるのか、ということも絶望的ですが、連中がまだ”ロレックス”を狙っていることにも驚きます」

 こう話すのは、貴金属展などが密集する東京・御徒町の時計店男性店主(60代)だ。8月31日に神奈川県厚木市の質店が、さらに9月3日にも鎌倉市の質店が、それぞれ2人組の強盗被害に遭った。厚木では実行犯役の男が居合わせた住人などに取り押さえられ逮捕。後日、運転手役を自称する男が出頭し逮捕された。鎌倉でも、店主に取り押さえられた男や逃走した男らが逮捕され、全員が「闇バイト」に応募したという旨の供述している。

ロレックスを盗んでも割に合わない

 銀座や上野、御徒町などでも高級時計や貴金属を狙った連続強盗事件が起きていたこともあり、こうした商品を扱う業者の間では、盗品時計のロットナンバーが共有されている。さらに、所轄警察暑や組合などの指導も入り、強盗対策を進めていた矢先、狙われたのは厚木や鎌倉といった「郊外」の店舗だ。

「盗品のロットナンバーは小売の同業者だけでなく、質屋などにもリストが配布されていて、買取の際に気をつけるよう徹底されています。ですから、換金がしづらい。もうロレックスを盗んでも割に合わない、犯人たちはそう考えると思っていましたし、実際に強盗事件はいっときの間、発生していませんでした。さらに、警察から指導が入り、防犯カメラを新たに設置したり、盗まれやすい高額な品を表から見えるショーケースに陳列しないなど、かなり対策をしていました。ほとぼりが覚めて、強盗対策の薄そうな郊外の質店を狙ったのでしょう」(時計店店主)

 同じような見方は、事件を取材した大手紙社会部記者からも聞かれる。

「かつて都市部で相次いでいた強盗事件では、高額で転売しやすいロレックスや、人気のあるクロムハーツなどアクセサリーが奪われていました。これらは盗品登録されているため、日本国内では転売が難しい。そこで、盗品を中国へ流していると見られていましたが、しばらく途切れていたようでした。この換金ルートが最近復活したのか、強盗対策を厳しくしている都内や繁華街の店舗ではなく、新たに郊外を狙うようになって最近の事件が起きたのでしょう。今でも、まだ郊外の店舗では表から見えるショーケースに堂々とロレックスを陳列しており、事前の下見も行いやすい」(大手紙社会部記者)

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン