14:00~15:30 本番。メイクと衣装でいつもの「すち子」に。座長・吉田裕の「ドリルすんのか~い」で歓声が沸く(写真提供/吉本興業)
アドリブをどう入れるか
現在、吉本新喜劇は109人もの団員を抱えている。売れっ子はひっきりなしにキャスティングされるが、中には1年間、一度も声がかからない役者もいる。そんな若手にすっちーはこんな期待を寄せる。
「役をもらえたら一か八か、勝負したらいいんです。めちゃめちゃ勇気のいることやけど、こんなアドリブを入れたらおもろいかなと思ったらやってみる。スベったら怒られるけど、ウケたら勝ちなんやから。珠代姉さんなんて、まだ若手がアドリブを入れることに厳しかった時代に『いらんことすな!』って怒られて、すいませんって謝りながらも、次の日、またやってたんですから」
珠代は、そうして現在の地位を築き上げたのだ。
「人と同じことやっててもお金にならないですから。この前、ネットで(若手コントユニットの)ダウ90000のコントを観てたら、ものすごい緻密なんですよ。ストーリーが。でも新喜劇は笑いの中にちょっとストーリーがあるみたいな感じかな。なので、お話がどう動くかというよりも、変な動物園に来ちゃったなくらいの感じでちょうどいい。わけわからんけど、変なものと遭遇して笑ってしまうという。それが新喜劇のいちばんの強みだと思うんです」
確かに、変な動物園である。だが、おそらくは世界で唯一の、笑かしてくれる動物園でもある。
【プロフィール】
すっちー/1972年、大阪府生まれ。2007年に新喜劇に入団し、2014年に座長に就任。
島田珠代(しまだ・たまよ)/1970年、大阪府生まれ。1988年に入団後、1990年代初頭から現在まで第一線で活躍。
【取材・文】
中村計(なかむら・けい)/1973年、千葉県生まれ。著書に『甲子園が割れた日』『勝ち過ぎた監督』『笑い神 M-1、その純情と狂気』など。スポーツからお笑いまで幅広い取材を行なう。近著に『落語の人、春風亭一之輔』と、共著『高校野球と人権』
※週刊ポスト2024年9月20・27日号