照ノ富士
貴乃花氏自身、「学生出身力士には絶対に負けないという気持ちが強くありました」と振り返る。
ただ、この流れは「仕方ないことじゃないかと思います」とも続けた。
「私が部屋をやっていた時も感じたことですが、いち相撲部屋ごときで勧誘をしても、親御さんは特待生で大学まで行くことを選びたい。中学や高校を卒業と同時にプロになり、ダメだった時に学歴がない道は、現代社会では選びにくいのです」
大の里の所属する二所ノ関部屋は“週休2日制”で、筋トレ2日、土俵での稽古3日といった独自の内容で知られている。
「四股やテッポー、すり足などの基礎動作を徹底しているのではないか。それなら納得できます。ぶつかり稽古は衝撃で体が壊れますからね。学生出身力士ということで“15歳で入門した力士のように叩かれて揉まれてきた強さじゃない”という部分を師匠が感じているのでしょう。上手に育てているのではないか」
大の里はこれからプロの厳しさに直面する。大関からさらに横綱に昇進するとなれば、「受けて立つ」ことも求められる。勢いで出る相撲を取る大の里も、そういう相撲を覚えていくのだろうか。
「自然とそうなっていきます。負けられない相撲になっていく。横綱になれば、勝って当たり前。負けてはいけない地位だし、勝ち方や負け方が問われる地位だとも教わりました。負けた翌日の勝ち方も求められる。そんな自分との戦いを克服しないといけない」
(第2回につづく)
聞き手:鵜飼克郎(うかい・よしろう)/1957年、兵庫県生まれ。ジャーナリスト。スポーツ、社会問題を中心に取材活動を重ね、野球界、角界の深奥に斬り込んだスクープで話題を集めた。近著に『審判はつらいよ』(小学館新書)。
※週刊ポスト2024年10月11日号