ライフ

《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」

宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏

宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏(撮影/杉原照夫)

 1969年、アメリカの「アポロ11号」が成し遂げた世界初の月面着陸の快挙を、日本人はブラウン管から眺めていた。あれから55年、いまや日本は月面探査で大きな存在感を放っている。日本人宇宙飛行士の月面着陸は目前に迫り、日の丸ベンチャーも世界をリードしている。人類が再び宇宙を目指す意義や目的とは何か。宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏が語る。【取材・文/稲泉連(ノンフィクションライター)】

 * * *
 1969年7月20日。人類が初めて月に降り立ったその日、アポロ11号のアームストロング船長が月面を踏む瞬間のテレビ中継を、中学3年生だった私は熱狂しながら見ていた一人でした。白黒テレビの画面、アームストロング船長が慎重に梯子を降りていく姿が映し出される。そのとき、これまで到達できなかった天体に人類が初めて到達したという事実に、私は大きな感動を覚えました。夜空に浮かぶ月が確かに実在し、そこに人類が立ったのだ、と。

 そのように宇宙を身近に感じられたことは、後に私自身が「宇宙に行きたい」と考え、宇宙飛行士を目指した大きな理由の一つにもなっています。

 その後、半世紀以上の歳月が流れ、いま、世界は再び月面探査を積極的に行なおうとしています。2017年にはアメリカが月面に人を送り込む「アルテミス計画」を発表し、月の探査が本格的に始まりました。

 では、なぜ人類は再び月に向かうのか。その理由について考える際、私はまず次のような前提を思わずにはいられません。

 いま、地球上では様々な開発が限界近くまで進んでいます。人類がさらなる進歩を続けるためには、新しい科学技術を生み出していかなければなりません。そのための舞台こそが地球外の環境であり、私たちの暮らす地球に最も近い月なのです。

 人類が地球の上だけで活動を続けていると、資源やエネルギー消費量の拡大が環境に過度な負荷をかけてしまいます。その意味で地球の外に生存圏を求めて活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然だと私は思っています。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン