村上敦子被告の自宅

村上敦子被告の自宅

生命保険約2000万円、死亡後の退職金約700万円の大半が敦子被告に

 直哉被告と保彰の母親であるAさんも、売春行為を行なっていた。「敦子に借金があり、返すためだと聞いていた」と松野新太は証言していたが、Aさん本人が尋問で語ったところによれば、実際は、敦子から「Aから母親に風邪の菌が移って大変な病気になってしまったから、その治療費と賠償金を払え」と言われたことがきっかけだったという。

 売上が減少したり、化粧のノリが悪いといったことでAさんは敦子被告や保彰から叱責され、時に殴られてもいた。また敦子被告を頂点とするグループは、Aさんの再婚相手に対しても美人局詐欺を行ない、500万円を支払わせている。しかし、敦子被告らがその金銭を受領していたことを松野夫妻が知ったのは逮捕後だった。

 美人局詐欺のうち、1件の詐欺、1件の詐欺未遂が事件化されているが、被害者から慰謝料の残金を敦子被告らが受け取っていたことを夫妻が知ったのも、また逮捕後だった。Aさんは一度離婚するが、元再婚相手が末期癌であることを知ると、再び入籍し、存命中に2回にわたり生命保険約2000万円を、死亡後に退職金約700万円を受け取っている。その大半が敦子被告に渡っていると検察側は冒頭陳述で指摘している。

 さてそんな中、Aさんはグループからの逃走を果たした。敦子・直哉両被告と保彰は、受け取り人が長男・保彰となっているAさんの死亡保険金を受け取るため、Aさん殺害を計画したが、実行には至らなかった(検察側冒頭陳述より)。さらに松野新太が証言するには「Aさんが僕らの、美人局してたという証拠を持ってるという話がもともとあって、それを取り戻したいから探していた」という。

 捜索の過程で敦子被告らは“Aさんの逃走を隆一さんが手助けした”ことを知る。そして、実際のところは分からないままだが“美人局詐欺の証拠が隆一さんの手元にある”と認識したという。ここから暗躍するのが謎のLINEアカウント「霊媒師JUN」である。

後編に続く

◆取材・文/高橋ユキ(ノンフィクションライター)

【プロフィール】
高橋ユキ(たかはし・ゆき)/1974年、福岡県生まれ。ノンフィクションライター。2005年、女性4人の傍聴集団「霞っ子クラブ」を結成しブログを開設。以後、フリーライターに。主に刑事裁判を傍聴し、さまざまな媒体に記事を執筆している。『つけびの村 山口連続殺人放火事件を追う』(小学館文庫)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』(小学館新書)など、事件取材や傍聴取材を元にした著作がある。

関連記事

トピックス

公判で明らかになってきた田村一家の“地獄の家”の全貌とは
《どうしてここから出られないの…》田村瑠奈被告は現在も「首を拾っただけなのに」と弁護人に伝達、裁判で明かされた“家庭内暴力”「ガムテープが飛んできた」「運転中に首絞め」【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
自身のXで追悼のメッセージを送った羽生結弦(AFLO_sports)
「一生忘れません」羽生結弦、飛行機事故で急逝した伝説のフィギュアスケーターに追悼メッセージ 苦しい時に心の支えになった大先輩との“手紙での交流”
女性セブン
ジャンボ軍団がセレクションに登場。左から金子柱憲、飯合肇、尾崎直道、尾崎健夫(撮影・太田真三)
10年ぶりに勢揃いのジャンボ軍団が語り合った「日本の男子ツアーが盛り上がらない理由」 女子はスターが次々と出てくるのに“ジャンボ尾崎の跡取り”が出ない苦悩
NEWSポストセブン
慶應義塾アメフト部(インスタグラムより)
《またも未成年飲酒発覚》慶大アメフト部、声明発表前に行われた“緊急ミーティング”の概要「個人の問題」「発表するつもりはない」方針から一転
NEWSポストセブン
1月23日、トランプ大統領はケネディ暗殺に関連する非公開資料を機密解除する大統領令に署名した(写真=AP/AFLO)
【本当に狙ったのは誰か】「ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件」の記録が完全公開へ 落合信彦氏の著書『二〇三九年の真実』で指摘された謎や不審点
週刊ポスト
性的パーティーを主催していたと見られるコムズ被告(Getty Images)
《裸でビリヤード台の上に乗せられ、両腕を後ろで縛られ…》“ディディ事件”の被害女性が勇気の告発、おぞましい暴行の一部始終「あまりの激しさにテーブルの上で吐き出して…」
NEWSポストセブン
引退後の生活を語っていた中居正広
【全文公開】中居正広、15年支えた恋人との“引退後の生活” 地元藤沢では「中居が湘南エリアのマンションの一室を購入した」との話も浮上
女性セブン
2名の未成年飲酒が確認された慶應義塾アメフト部(時事通信/インスタグラムより)
《2年足らずで再度発覚》慶應アメフト部員、未成年飲酒で複数名が処分 同部が声明「厳正に対処いたします」
NEWSポストセブン
親方としてのキャリアをスタートさせた照ノ富士(写真・時事通信フォト)
【25億円プロジェクト】照ノ富士親方の伊勢ヶ濱部屋継承 相撲部屋建設予定地の地主が明かした「6階建てお洒落建物」構想
NEWSポストセブン
水原被告がついた「取り返しのつかない嘘」とは
水原一平被告がついた「取り返しのつかない嘘」に検察官が激怒 嘘の影響で“不名誉な大谷翔平コラ画像”が20ドルで販売
NEWSポストセブン
折田氏が捜査に対し十分な対応をしなかったため、県警と神戸地検は”強制捜査”に踏み切った
《「merchu」に強制捜査》注目される斎藤元彦知事との“大きな乖離”と、折田楓社長(33) の“SNS運用プロ” の実績 5年連続コンペ勝ち抜き、約1305万円で単独落札も
NEWSポストセブン
ギリギリな服装で話題のビアンカ・センソリ(インスタグラムより)
《露出強要説が浮上》カニエ・ウェストの17歳年下妻がまとった“透けドレス”は「夫の命令」か「本人の意思」か
NEWSポストセブン