事件をめぐる人物相関図
妻が男と会って性行為をした後、「自分の嫁だぞ」と言う役割
親子ほど歳の離れた直哉被告と敦子被告は不倫関係にあった。2人が出会ったのは、直哉被告が小学生の頃だったという。事件における重要人物である、直哉被告の実母「Aさん」と、敦子被告がパチスロを介して知り合ったことが始まりだ。敦子被告はAさんと親密になったが、次第にAさんに因縁をつけ、金銭を要求し、金を巻き上げていく。他方、敦子被告はAさんの実子である直哉被告とその兄、保彰(逮捕時31、美人局詐欺で有罪判決)の面倒を見て手なずけていった。のちに敦子被告は兄の保彰と結婚したが、弟で殺人の実行犯である直哉被告とも肉体関係になる。
敦子被告は直哉被告や、実姉の市瀬恵美(美人局詐欺で有罪判決)も巻き込み売春を行ない、リピーターを標的にして美人局詐欺をするようになった。Aさんにも売春をさせ、売り上げが落ちると制裁を加えていたという。敦子被告への借金返済に窮した元夫の松野新太とその妻、みき子(美人局詐欺や証拠隠滅でともに有罪判決)も加担するようになり、「敦子被告を頂点とする売春・美人局グループ」が形成されていった。
このグループの活動実態と役割分担については、敦子被告の元夫・松野被告が証人尋問で詳細に証言している。
「僕の妻のみき子が、男と会って、性行為する。僕は、えーっと、最後のほうは証拠の写真を撮ったりしていましたが、関わり出した2〜3年前ごろは、男性に対して『自分の嫁だぞ、旦那だぞ』と言って話をする役割でした。敦子の姉の市瀬恵美は、みき子が男性とホテルに入るとこ、出るとこ、ってのを写真で撮る。直哉も同じく写真や動画を撮っていた。敦子は基本的には配置で、皆に対して『ここで待ってて』とか『写真撮って』みたいなことを言う」(松野新太の証言)
妻に、他の男性と性行為をさせ、ホテルの出入りを親族らで撮影したうえで、別れ際に男性を問い詰めて金を要求するという流れである。松野新太によれば、全てを敦子被告が仕切っており、また男性に対して具体的な金の話をするのも、敦子被告とその夫の保彰だったという。
「僕が『夫だぞ』と相手に声かける場面のことを“囲み”と言っていましたが、そこで敦子や保彰は僕から引き継いで相手と話をする。保彰と敦子2人の場合もあれば、どちらか1人の場合もあった」(同前)