「原発銀座」はどこに造る?

 さて、二〇二五年が始まる時点で私が林子平を見習って日本人に提言するならば、次のようになる。

 日本の東京から中国・上海まで境無しの空域なり。これを無視して日本だけ原発廃止に進んでよいのか

 細かい数字については、私はその分野の専門家では無いのできわめて大づかみに述べよう。日本の隣りに中国という厄介な国がある。その国の人口は日本の約十倍である、しかも「一人っ子政策」という極端な愚策を実行したために、高齢化が進む日本より一段と早く高齢化が進んでいる。これから数十年後確実に高齢化大国となる中国にとって、もっとも必要なエネルギーとはなんだろうか? もちろん電力だろう。

 中国人は最近、自分の国は「世界一」だと事あるごとに自慢するけれども、地方に行けば行くほど高齢化に向けての病院の設備や鉄道駅のエレベーター整備など、現時点ではまったく進んでいない。都会に住む中国人はまだしも中国人全体ということで言えば、真夏にエアコンで涼を取っている人間はそれほど多くはないだろう。だから、今後そういう人たちのために多大な電力を必要とするのである。彼らだって人間だ。それを求める権利はある。

 問題は、その膨大な電力をなにによって賄うかだ。中国にこれ以上水力発電用のダムを築かせ水をせき止めさせたら、南アジアが干上がってしまう。かと言って、化石燃料である石炭の燃焼による火力発電をさらに進めてもらっても困る。CO2が大量に地球にバラまかれることになるからだ。つまるところ、中国は原子力発電を盛んにするより他は無いということだ。日本なら地熱発電や風力発電などにシフトし、少しは原子力発電を減らすことは可能かもしれないが、中国の電力需要は桁が違う。産業の育成という点から見ても電力は不可欠である。

 では、このまま放置しておけばどういうことになるか、わかるだろう。中国は原子力発電所を今後大量に建設するだろう、ということだ。だが、二〇一一年七月に中国の高速鉄道が大事故を起こしたときのことを思い出してほしい。当局は原因究明をするどころか、穴を掘って事故車両を埋めてしまったではないか。そういういい加減な国なのである。仮に原発の設計はキチンとなされていたとしても、施工の段階でその設計どおりに原発が造られるかも保証の限りでは無い。

 人命に関することだから中国人も注意するだろう、というのは甘すぎる考えだ。二〇〇八年に四川省で大地震が起きたとき多くの子供が犠牲になったのは、施工業者が不当な利益を得るために屋根の工事などに手抜きをしたからで、中国とはそういう国なのだ。これが曲がりなりにも民主主義国家であったら、マスコミはそうした業者を強く批判し政権も交代する可能性があるから、最終的にそうした傾向は是正されていく。しかし、「絶対に民主化しない中国」ではそうした状況にはならない。

 では、そうした多数の原発(これを仮に原発銀座と呼ぼうか)を中国はどこに造るだろうか? それについて参考になる図面があるのでご覧いただきたい(地図参照)。これは、中国北部の砂漠地帯で発生した黄砂がどのように中国本土を席巻し、日本に流れてくるかというルートを示したものだが、読者のみなさん、ここで中国の指導者になったつもりで「原発銀座」をどこに建設するか考えていただきたい。

黄砂の飛来ルート

黄砂の飛来ルート

 まともな国の指導者が考えるのは、原発は万一の事故に備えて人里離れた地帯に建設する、ということだろう。ところが、その中国の「人里離れた地帯=砂漠」からは風が首都北京の方向に流れているのである。となれば、私だって中国の指導者ならば原発銀座は上海など東シナ海や南シナ海沿岸に建設するだろう。そうすれば、万一事故が起こっても放射能汚染は中国本土では無く日本や朝鮮半島に流れるだけで済む。

 おわかりだろう。つまり、われわれ日本人はこの先数十年の間に上海沿岸などに建設された中国製の「粗悪な」原発が、いつ事故を起こすかもしれないという恐怖に怯えながら暮らさなければならないかもしれないのだ。そして万一、いやもっと高い確率が予想されるが、そういう事故が起こったらどうなるか? それこそ「昔は日本海で獲れた魚は食えた」とか「昔は北九州にも人が住んでいた」などということにすらなりかねない。日本人は言霊信仰の影響で「縁起でも無い話」は生理的に受けつけないという民族的弱点を持っているが、今回述べたことを冷静に論理的に考えれば、決してあり得ない事態では無いということがわかるはずだ。

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