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中国で春節を前に地方出身の農民工の自殺が相次ぐ現状 不動産不況で建設会社などからの賃金未払い問題が深刻化、経済悪化の犠牲者に

不動産不況も影響か(写真は習近平氏/AFP=時事)

不動産不況も影響か(写真は習近平氏/AFP=時事)

 中国では日本の正月に当たる春節(旧正月=1月29日~)を前に、賃金を支払ってもらえないことに絶望した地方出身の農民工(出稼ぎ労働者)の自殺が相次いでいる。分かっているだけで、1月7日から10日の4日間で20人の農民工が中国全土の10省で、命を落としていたことが明らかになった。

 地方政府が高額な債務を抱える中、不動産市場の低迷によって、建設業界の賃金未払い問題が深刻化。抵抗のすべをもたない農民工が経済悪化の犠牲者となっているようだ。台湾の中央通信社が報じた。

 農民工が亡くなったとされる都市は北京市や上海市、広東省、四川省や甘粛省、河南省、陝西省、貴州省で、SNSなどに投稿された動画などから明らかになった。

 四川省の農民工は「家族はみんな、私の給料を当てにしている。もう実家に帰ることができない」などと言って命を絶ったという。他の自殺した労働者もほとんど同様に、賃金未払いによる経済的苦境が大きな理由とされる。

 こうした事態について、貴州省政府は公式ホームページで「雇用主が労働報酬を全額支払わない、または支払わなかった場合、農民工(出稼ぎ労働者)はどうすればよいですか」といった「Q&A」を掲載し、「雇用主が労働報酬の全額を支払わなかった場合、移民労働者は法律に従って人事社会保障行政局の労働安全監督機関に苦情を申し立てることができる。 法律に従って労働紛争仲裁のために労働人事紛争仲裁機関に申請することができる」とアドバイスするなど、農民工への賃金未払いが社会問題化していることを明らかにしている。

 また、ホームページでは当局はそのような行為を「違法な賃金の徴収」と認定し、「公の秩序を乱した」として「関与者を少なくとも5日間拘束し、同様の行為は法律に従って厳しく罰せられる」と警告している。

 中国最高人民法院(最高裁判所に相当)の報告書によると、昨年1年間で、中国全土の裁判所では労働報酬の支払い拒否の刑事事件約1000件と労働報酬に対する民事訴訟約8万2000件をそれぞれ受け付け、執行額は17億2,000万元(約370億円)に達しているとされている。

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