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村上由佳さん、最新長編『PRIZE ─プライズ─』インタビュー「自分が生み出した作品によって自分自身を律する気持ちが出てきた」

『PRIZE ─プライズ─』/文藝春秋/2200円

『PRIZE ─プライズ─』/文藝春秋/2200円

【著者インタビュー】村山由佳さん/『PRIZE ─プライズ─』/文藝春秋/2200円

【本の内容】
 本作の主人公の天羽カインは、本屋大賞を受賞以降、《絶え間なくベストセラーを生み出し続け、ドラマ化・映画化作品も多数。現在は長野県軽井沢に暮らす──》大人気作家。しかし、直木賞がどうしても獲れない。担当編集者の藤崎新と緒沢千紘に聞く。《「ね、今度こそいけるよね?」/「え?」/「直木賞」/──もちろん!/絶対ですよ!/という返事しか予想していなかったから、二人の目が揃って泳いだことにびっくりした》。作家の心の内、直木賞のシステム、作家と編集者の二人三脚ぶり……そして天羽カインは直木賞を獲れるのか。最後の1ページまで目が離せない業界最注目の長編小説。

「リミッターを解除して書くから、ダメ出ししてね」

「きょう取材にいらっしゃるの、緊張しませんでしたか?」

 ふんわりした笑顔で穏やかに話す村山さんだが、直木賞に賭ける作家の赤裸々な思いを描く小説『PRIZE ─プライズ─』では、周りを震え上がらせるような作家の本音がポンポン飛び出す。主人公イコール村山さんではないとわかっているものの、ある種の緊張を強いられる取材であることは間違いない。

『星々の舟』で2003年に直木賞を受賞、押しも押されもせぬ人気作家である村山さんが、物議を醸しそうな今回の題材を書こうと思ったのはなぜなのだろう。

「『ダブル・ファンタジー』で女性の性欲に正面から向き合ったときも、自分の中のタブーを描くという意味でかなりの冒険でした。それ以外に向き合いたくないタブーは何かと編集者と話すなかで、『認められたい、褒められたいという承認欲求が自分には強くある』という話をしたんです。『そんなもの私には関係ありませんという顔をしてきたから、さらけ出すのは非常に恥ずかしい』と言うと、『じゃあそれを書きませんか』と言われまして」

『ダブル・ファンタジー』のときも、主人公が自分のことだと思われてもかまわないという覚悟をして書いたように、今度の『PRIZE』でも主人公は村山さんに重ねられかねない女性作家に設定、賞の名前も「直本賞」などと架空のものにせずそのまま「直木賞」にしている。

「直本賞と書いたところでみんな直木賞だと思って読むわけですから。文藝春秋の媒体(初出は「オール讀物」)ならではの強味を生かし、取材をきっちりして、『直木賞の真実』と言えるぐらいのものを書こうと思いました。『リミッターを解除して書くから、これ以上は困るとなったらダメ出ししてね』とお願いしたんですけど、ほとんどダメ出しはなく、やりたいようにやらせてもらいました」

 年に2回の直木賞の候補作を文藝春秋社内でどう選ぶのか、選考過程をじっくり取材して正確に描いている。

「5、6作のうち文藝春秋の本が1、2作入っていると、『どうせ文春シフトでしょ?』みたいなことを言われがちですよね。私自身、初めて文藝春秋で仕事をした『星々の舟』で受賞したので、『ゲタを履かせてもらったんじゃないでしょうか』って気持ちがどこかにあったんですけど、忖度とかゲタを履かせるとかありえない世界だとわかって、20年前の自分が喜ぶところもありました」

 主人公の作家天羽カインはむき出しの本音を炸裂させる。直木賞の候補に入れろと編集者に要求、選考で落ちると文藝春秋の局長を呼びつけ、出向いてきた局長に飲み残しのビールを浴びせる。

「私なら腹で思ってても絶対表に出さないことを全部出す作家を書いてみたかったんです。性質だけでいうなら、カインと私は両極ぐらい似てないと思うんですけど、帯のコメントを書いてくれた千早茜さんに『でも由佳さま、一度も考えたことのないことは書けませんよね』ってさらっと言われて、本当にその通りです……(笑い)。カインは自分が嫌われるとか仕事がなくなるとか全く考えずに作品を守るためだけに言っているわけで、これだけ全部言えたら気持ちいいだろうなと。ある意味、清々しい人だなと思います」

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