「ドキュメンタリーでは“インフォメーション”が求められてしまうんです」(佐井)
「ガパオライスではなくカレーライス」
ドキュメンタリーでは演出を務めている一方で、ドラマは基本的に演出ではなくプロデューサーを担当している。
「10話構成のドラマを公共のテレビで放送するのは、非常に大きなプロジェクトです。いい意味で分業制がしっかりしていて、プロデューサーは企画を立ち上げ、脚本家をアサインし、キャスティングも行なう。テレビドラマにおいて、そんな最前線で作品を牽引するプロデューサー像に憧れています。
すごく家庭的なドラマだから、逆にあえて作家性の強い演出家をあてようとか、どういう掛け合わせをするかみたいなことを、プロデューサーが采配する。その面白さを自分なりの形で実現したいです」
昨今、ドラマで話題を集めるのは、バカリズムが脚本を担当した『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ)や川口春奈と目黒連(Snow Man)が主演を務めた『silent』(フジテレビ)など、普段ドラマを見ない層にリーチしたものやサブカルチャーな享受をされるものが多いのではないかと佐井は分析する。一方で、TBSといえば「ドラマのTBS」と言われるように、ドラマは局の看板であり、連続ドラマであれば大衆に開いた王道の作品が内外から求められる。
「僕が新入社員の頃ドラマ部の先輩から教わったのは、TBSドラマは例えるならば“カレーライス”だと。時に他局は変化球としてガパオライスとかタコライスを出すときもあるけれど、うちが視聴者にそういうのを出したら、『カレーだって言ってんじゃん、ビーフカレーを作り直してこいよ』と言われるかもしれない。もちろんカレーであってもグリーンカレーを出すのもまた違和感を持たれてしまう。
私たちが目指すものは、こだわりのあるビーフカレーをつくることかもしれません。『スパイスが意外と効いてていいね、これ何のスパイス使ってんの?』っていうように思われるものを作りたい。それが今の僕のTBSドラマ部にいる人間としてのモチベーションであり、先輩から継承するべき志なのかなと」