「米ポーズ」をとる米利休氏(Instagramより)
応援したくなるポイントはふたつあります。
ひとつは視聴者よりも立場が弱いこと。僕の場合、廃業寸前の農家を継いだとか、東大を卒業すれば平均年収が30歳で1000万円弱、40歳で1200万円弱の世界があるにもかかわらず、キャリアを捨てて儲からないイメージの強い業界に入ったことなどです。そしてそれを嘘偽りなく、包み隠さずに発信していることも重要です。
もうひとつのポイントは、とはいっても立場を弱くしすぎてはダメだということ。目標を達成できる希望や可能性が見えてこず、「この人に何ができるのか?」というふうに見えてしまうからです。僕の場合、この点をクリアできる要素が東大卒という肩書でした。うまい具合にバランスが取れていて、応援したくなるという弱者的な要素と、「この人はもしかしたら何かやってくれるかもしれない」という希望の要素とが合致したことが、個人的には大きな強みになったと思っています。
そのほかに、リスクを取ることも、応援したくなる要素になるかもしれません。僕で言うと、廃業寸前の農家を継いだというリスクを取っているからこそ、この先どうなっていくのかが気になるというところにもつながります。
また、投稿に一貫性があることも重要です。例えば、食事・観光・育児などをごちゃまぜに投稿していると、なんのアカウントかわからなくなり、動画単位で見れば再生数の伸びる可能性のある投稿ができても、実際には伸びないアカウントになります。だからこそ、どのような人に・どのような価値(内容・情報)を・どのような形式(フォーマット)で届けるかというコンセプトと、その背景設定や人物イメージ(ブランディング)をブラさない発信ができるかがカギとなります。
強烈なメッセージになったじいちゃんのSNS登場
僕は農業を始めてまだ日が浅く、2024年に初めて農家としての1シーズンを経験したばかり。農業経験ゼロの部分はじいちゃんでカバーさせてもらうことも、SNS戦略のひとつになりました。
発信するようになってから気づいたのは、SNSを見ている方からすると、説明的で学びになる発信よりも、感情を共有できる動画のほうが見る理由になるということです。例えば「日本を変えたいです!」と言っても、その感情を理解できる人はあまりいないと思うのですが、「じいちゃんのつくってきた米を守りたい!」という家族愛的な感情は、多くの方が理解できる感情であると思います。じいちゃんが登場したことによって、僕が伝えたかったことが視聴者に伝わり、さらに広がっていったというのはすごく感じました。思わぬ相乗効果でした。じいちゃんに登場してもらわなかったら、きっとここまで伸びていなかったと思います。
(了。第1回を読む)
楽しむことを大事にしているという(Instagramより)