放蕩息子にマジギレしつつ照れる古舘伊知郎(イラスト/佐野文二郎)
放送作家、タレント、演芸評論家、そして立川流の「立川藤志楼」として高座にもあがる高田文夫氏が『週刊ポスト』で連載するエッセイ「笑刊ポスト」。今回は、会って話し込んだ人たち、放蕩息子にマジギレしつつ照れる古舘伊知郎について。
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もうすぐ喜寿だというのにめまぐるしい毎日。いきなり届く訃報だらけの中、私は趣味“人間”と思えるほど人と会っては話し込んでいる。マスコミからミニコミまでなんせコミュニケーションが飯の種。55年間もペンと舌だけで人一倍生きてきた。
私の『ラジオビバリー昼ズ』だけでも会いに来たのは桜真っ盛りの時に『夜桜お七』坂本冬美。縁起物である。人間にも四季があるのか。夏のTUBEのように。
会いたいからとロッチが来る。中岡曰く、「センセ、僕がヤクルトファンと言うのは止めて下さいネ。たまたま出川さんと神宮球場行った時お会いしただけですから。一塁側におっても心は阪神」。
神田っ子、とにかく威勢のいい梶芽衣子が来て「ライブまたやるから来てよ、ちゃんと」。同じ東京人としてどこかいつもウマがあう。内緒だが梶芽衣子と加賀まりことうちの姉がまったく同じ性格。このジャンルの東京の女性のトップが沢村貞子なんだろうな。
“6人の子沢山”お宮の松が来て「またお菓子沢山送って下さい」と帰る。デビュー25周年山内惠介来てただただ笑って帰る。お互い氷川きよしの新曲話にびっくり。まさか名取裕子さんまでが訪れてくれるとは。すぐに真逆の男くさい怒髪天が来る。増子にメールが届く。宮藤官九郎より「楽しみに聞いてるよ」。
4月だけでも「公」でこれだけ人と会って「私」でこの倍ぐらいの方達と会って話をする。
そんな中、4月21日に来てくれた古舘伊知郎は相変らず四角いジャングル、私のスタジオをものともせず炸裂。
昔から「しょうがない息子で」と言っていた古舘佑太郎がラジオに出ていたのを偶然きいてて「ひょうひょうとしていい子だなと思った」と伝えるとやっぱり親バカなのか少し照れて「あいつは高校時代からずっとバンドだけやってて、そのうちヒット曲出すからって何も出ない。オレはまったく認めないあんな奴」と言っていたのに、私の知る限りではサカナクションの山口にいきなり「カトマンズへ行け」と言われ一人バックパッカーとして旅を続け帰ってきて『カトマンズに飛ばされて』という本を出したら売れちゃった。何の報告もないから父は「どうなの?」と身体の心配などもあって電話。「あの野郎ちょっと気取った言い方しやがって。“おう増刷決まった”」だと。「お前は売れない編集長か!?」。ああは言いつつ息子は可愛いのだろう。
来週永六輔の孫が「監督やったから」と来る。俺は何世代とつきあうのか。
※週刊ポスト2025年5月23日号