2024都知事選で安野・清水両候補は柴又駅前で合同街頭演説会を実施。討論というよりは、お互いが持つ知識と経験を持ち寄った話し合いという雰囲気だった(2024年6月撮影:小川裕夫)
小池都政下で副知事を務めている宮坂氏が都知事選で敵対した候補者にアドバイザーに抜擢する。「戦いが終わればノーサイド」ということなのだろうが、選挙で競った相手に対してのわだかまりは簡単には消えないだろう。
しかし、安野氏は選挙を候補者同士の戦いとは捉えていないフシがある。それは2024年の都知事選での安野氏の行動からも窺える。
2024都知事選は史上最多の56名が立候補した。56名もの候補者が各地で街頭演説を実施すれば、どこかで必ずバッティングしてしまう。その際、陣営間で「うちが先に場所を確保していた」「こちらは昨日から準備していた」という諍いが起きる。
特に有楽町駅前や銀座4丁目、新宿駅前、渋谷駅前といった人が多く集まる場所は街頭演説の場として人気が高い、土日週末ともなれば、人気の場所が取り合いになることは誰の目にも明らかだった。
そうしたトラブルを未然に防ぐべく、安野氏は候補者56名に対してグループLINEで街頭演説の情報を共有することを提案した。しかし、街頭演説の場所や時間は選挙戦の支持拡大において重要度の高い機密情報でもある。候補者がどこを回るのか、どれぐらい時間をかけるのかといった情報を、そう簡単に他陣営へ漏らすことできない。そのため、安野氏の提案に応じたのは清水国明候補の一人だけだった。
安野氏の提案は不発に終わったが、そこから清水候補との関係性が深まり柴又駅前での合同街頭演説会が実現する。筆者は清水・安野両候補が選挙カーを並べる光景を間近で取材したが、それは選挙の演説というよりも互いの健闘を称え合うエール交換のような光景だと感じた。
SNSで広がった勇ましいイメージ
選挙であっても対立を意図しない安野氏に対して、石丸氏は安芸高田市長時代から一貫して対立構造を明確化して支持を拡大してきた。市長時代の議会答弁は、切り抜き編集されたバージョンも含めてYouTubeなどの動画サイトに多数アップされている。それらを視聴すると、石丸氏が勇ましく答弁していたり、既得権益を打破するかのような立ち振る舞いを目にできる。
また、新聞・テレビという、いわゆるオールドメディアを敵対視し、反撃する姿も喝采を浴びた。選挙特番では社会学者の古市憲寿氏や乃木坂46元メンバーの山崎怜奈氏とのやりとりも話題になった。そのやりとりからは石丸構文という新語も生まれたが、そうした現象が起きるのも石丸氏の絶大な人気を裏付けるものと言っていい。