最終日に新宿駅アルタ前で街頭演説する石丸候補。選挙戦が進むにつれて、支持者の数は増えていった(2024年7月撮影:小川裕夫)
筆者は都知事選の告示前後で、石丸氏の街頭演説に5回以上、足を運んだ。熱狂的な雰囲気を感じつつも、事前から聞いていたような「これまでの政治家とは一線を画している」とまでは思えなかった。
それでも何かが伝わっていたのだろう、凄まじい勢いで石丸氏への支持が拡大していった。市長時代から主にSNSを通じて広がったイメージに魅力を感じている支持者は多かったようだ。街頭演説に集まった人たちに話を聞いてみると、「歯に衣着せぬ物言いが、これまでの政治家とは違う」と口にし、「だから、何かを変えてくれるかもしれない」と期待している人が多かった。もっとも、街頭演説では攻撃的な言動をしているとは感じず、具体的な内容にも乏しいものだったのだが。
石丸氏への支持は選挙の熱に煽られた盛り上がりに終わらなかった。都知事選後も高い人気は衰えることがなく、その人気を後ろ盾にして2025年1月、新党「再生の道」の立ち上げを発表し、都議選に挑むことも表明。さらに、続けて参議院選にも候補者を擁立すると明らかにした。
明確に異なる政治スタイル
石丸氏と安野氏はどちらも都知事選で全国区の知名度を誇る存在になり、その後は都政にも国政にも影響を及ぼしている。
2人は既存政党ではなく、自ら政党を立ち上げて今の硬直化した政治を動かそうとしている。石丸氏の再生の道、安野氏のチームみらいは、今のところ政党助成法における要件を満たしていないので厳密には政治団体という位置付けになる。
そのため、活動の原資は支持者からの献金(寄付)に頼らざるを得ない。独自の団体を立ち上げて、徒手空拳で既存政党に挑む姿勢も2人の共通点でもある。既存政党のように潤沢な資金がない点も、判官贔屓を好む一部の有権者を鷲掴みにしている。
しかし、ここまで述べてきたように両者の政治スタイルは明確に異なる。どちらの政治スタイルが優れていて、どちらが劣っているのかという話ではない。それを判断し、どちらを支持するのかを決めるのは、あくまで有権者だ。その最初の審判は7月に投開票が想定される参議院選挙で下されることになるだろうが、そこで下された審判だけで石丸・安野両氏の評価が定まるわけではない。
長い目で見た時、有権者はどちらの政治スタイルを選ぶのか? それとも、対立も協調もよく見通せない従来のような政治スタイルが続くのか? 今夏の参院選は政治スタイルの新旧が問われることにもなるだろう。
都知事選で安野候補はAIの専門家であることをアピールし、技術が人々の暮らしを向上させてきたと訴えた(2024年6月撮影:小川裕夫)