5月場所6日目に姿を見せた「溜席の着物美人」。臙の着物姿で花道のすぐ脇に座っている
◆館内放送でも「溜席での応援タオル」に注意喚起
観戦マナーという点では、足を投げ出したり、携帯電話で写真や動画を撮っている姿がNHK大相撲中継で映り込んでいることも少なくない。
溜席によく姿を見せることで知られているのが、毎年11月の九州場所では控え行司のすぐ隣に15日間通い続け、「着物美人」としてネットニュースに取り上げられるなどしてきた女性だ。今場所6日目も、西花道横の2列目に姿を見せていた。この日は臙の着物に、シルバーの市松模様の帯での観戦だった。この「溜席の着物美人」に、溜席での観戦者に変化について聞いてみた。
「以前は女性が着物、男性は着物かジャケットにネクタイというのが一般的でした。相撲観戦には着物姿が一番相応しいと思っています。季節の移ろいを身近に感じながら春夏秋冬のおしゃれができるのが着物です。それぞれの場所に合わせた着物で相撲観戦を楽しませてもらっています」
前出の茶屋関係者は「溜席での観戦マナーは一般の人も『維持員』に準ずるものと考えられるでしょう」と言う。維持員とは、協会に対して所定額の維持費を寄付した人たちが、土俵周りの「維持員席」での観戦が認められる制度を指す。
「維持員は本場所での力士の技能審査をする立会人、という立場。そのため観戦にはいくつもの暗黙のルールあります」(前出・茶屋関係者)
溜席では、携帯電話の使用や写真・動画の撮影、あるいは応援タオルを掲げることは御法度。日本相撲協会の公式HP内の維持員制度の説明のなかでも維持員のマナーとして「タオルを掲げる行為はお控えください」と書かれるようになったし、館内放送でも禁止行為として注意喚起している。「溜席の着物美人」に聞くと、こう話した。
「声を出して贔屓力士を応援するのはNGとされます。勝った力士への拍手は問題ありませんが、野次や勝負審判への批判とかもダメなんです。もちろん飲食は禁止です。
服装に正式なルールがないし、季節も関係しますが、力士以上に目立たなという配慮があってもいいのかと思います」
溜席の着物美人のような存在が、土俵の盛り上がりに花を添えていることは間違いない。幸運にも入手しづらいチケットで相撲観戦が実現したのなら、粋なお客さんとして伝統文化を楽しむのもありかもしれない。