日本体操協会が選手に実施したアンケート(回答欄は黒塗りにした)
説得を受けた4人は昼までにJISSに戻ったが、代表入り前から過酷な練習に耐え抜いてきた4人が揃って起こした行動に、関係者の間に衝撃が走った。
彼女たちが行動に出た理由のひとつが、村田氏の指導だった。協会は2週間後の3月12日、クラブや保護者向けの説明会を開催。筆者は2時間超にわたる説明会の音源データを入手した。報告したのは新体操の国内トップ、橋爪みすず副会長(61)だ。
橋爪氏は、行動を起こした4人と補欠選手5人を含めた計9人から聞き取った内容を報告した。
〈本来の自分たちが強くなる、技術を向上するという目的でなく、村田氏の顔色を窺いながら萎縮した練習になっていた〉
〈その場その場で適切な指摘や寄り添った声掛けが少ない、また、ないと感じることが多かった〉
〈なぜミスしたのか、追い詰められると感じる言葉が多く大変辛かった〉
村田氏の指導に接したことがある指導者が、筆者の取材にこう明かした。
「手具を投げる演技のミスに、“ちゃんと投げなよ”という精神論になる。立ち位置とか、投げの改善点とか、技術的な原因を伝えずに怒るから、硬くなった選手は乱れ、ミスが出てさらに乱れる」
さらに、選手の話を聞いたある競技関係者は「村田氏は特定の選手に対して、その場に当人がいないかのようにふるまうことがあった」と話す。日本スポーツ協会が定める「スポーツ指導者のための倫理ガイドライン」は、無視するような態度や言動で相手を追い詰めることも精神的暴力と位置づけている。
大会での目撃談もある。
「2年前のマニラの国際大会で試技前に村田さんが怒鳴り散らし、手具を持つ選手の手がブルブル震えていた。案の定、開始直後に大きなミスが出た」(別の競技関係者)
その後、フェアリーは2023年の世界選手権(バレンシア)、2024年のアジア選手権(タシケント)で結果を残せず、パリ五輪出場を逃している。