日本体操協会に事実関係を問うと回答があった。
「当事者から調査の続行を望まない旨の意思が表示され(略)当事者の意に反した調査を続行することは妥当でないものと判断しました」
すなわち、事実認定を途中で諦めたのだ。逆にいえば、確定もしないのに、「パワハラはなかった」とした村田氏の発言は、やはり事実と反する。
セクハラ疑惑に関する当事者間の認識の食い違いを考えると、やはり第三者が調べるべきではないかを聞くと、協会は「弁護士に相談し、選手の意向に従って動いたものです」と答えるのみ。
協会は多額の補助金収入に支えられた公益法人だ。「選手の意向」と繰り返すばかりで、強化体制の欠陥を非公開で取り繕うなど、国民が望む健全な運営とは程遠いことはいうまでもない。
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【プロフィール】
広野真嗣(ひろの・しんじ)/ノンフィクション作家。神戸新聞記者、猪瀬直樹事務所スタッフを経て、フリーに。2017年、『消された信仰』(小学館文庫)で小学館ノンフィクション大賞受賞。2024年刊の『奔流 コロナ「専門家」はなぜ消されたのか』(講談社)が科学ジャーナリスト賞2025優秀賞を受賞、大宅壮一ノンフィクション賞最終候補作に。
※週刊ポスト2025年5月30日号