ライフ

ミュゼプラチナム、債権者が破産を申立て、東京商工リサーチが報じる、一時休業の予定期間を過ぎても再開されず、破産開始決定を受ければ債権総額、債権者数は過去最大に


一時閉店の予定期間を超えても再開が見えないミュゼプラチナム(公式ホームページより)

一時閉店の予定期間を超えても再開が見えないミュゼプラチナム(公式ホームページより)

 2025年5月6日、東京都豊島区の池袋は、みどりの日の振替休日に当たり、多くの人で混み合っていた。その中、筆者は休みであるにもかかわらず、仕事の作業をするために東口の喫茶店に入っていた。

 そのビルには、ミュゼプラチナム池袋東口店が入っていた。しかし、営業はしていなかった。

 「日ごろよりミュゼプラチナムをご利用いただきありがとうございます。当サロンは、サービス向上のため、準備期間として下記の期間、一時休業させていただく運びとなりました」

 このように記されていたものの、休業期間は2025年3月22日(土)~4月20日(日)とある。

 既に、休業期間を2週間以上超過しているが、一時休業が明けていないことに異常事態であると感じ取った。

利用者が置き去りに

・債権者が破産を申請: 2025年5月16日、ミュゼプラチナムを運営するMPHが債権者から東京地裁に破産を申し立てられた。負債総額は200億円以上、債権者は約20万人。
・過去最大規模:東京商工リサーチによれば、負債・債権者数ともに脱毛サロン倒産として過去最大規模となる可能性。
・脱毛ビジネスの構造的問題:広告で顧客を集めて前金を得て再び広告に回すという循環モデルが背景にあり、価格競争と広告依存が経営を圧迫した。

 2025年5月16日、同社の動向を粘り強く追っている東京商工リサーチは、ミュゼプラチナムを運営するMPHが、債権者から東京地裁に破産を申し立てられたと報じた。今後、東京地裁が破産開始決定の判断をすることになる。

 東京商工リサーチによると、MPHの未施術の顧客を含む債権者は約20万人。負債総額は200億円以上が見込まれるという。2022年以降、脱毛ラボ、C3、銀座カラー、ウルフクリニック、アリシアクリニック、トイトイトイクリニックなど、複数の脱毛サロンが相次いで経営破たんしている。

 東京商工リサーチは、「MPHが破産開始決定を受ければ負債総額、債権者数、ともに脱毛サロンの倒産で過去最大となる」と説明している。

 ミュゼプラチナムは、運営会社が次々と入れ替わってきたことで知られるようになった。詳細は、参考文献に示した東京商工リサーチの報道に詳しいので、確認してほしい。

 経営破たんまでの経緯を見ると、利用者は置き去りにされた格好となった。

 ヒフコNEWSでも脱毛サロンの経営破たんを何度か伝えたが、脱毛ビジネスは広告で人をかき集めて、前金を得て、その資金を再び広告に投じるというモデルが構築されていた。エステ脱毛や医療脱毛のサロンが増加する中で、広告合戦と価格競争が激化し、広告を出さなければ集客競争に脱落し、価格も原価を下回る水準が提示されるなど、消耗戦の様相を呈していた。

 そうした中で、大手エステ脱毛サロンですら採算が取れなくなり、相次いで経営破たんしていった。利用者は、そうした脱毛サロンの状況をなかなか知ることもできず、施術を受けられず、返金もないままに、前払い金だけを支払い、施術も返金も受けられず、損失を被る状況となった。

 これだけ脱毛サロンの倒産が続いたことで、利用者の間でも警戒感が広まり、安易にコース料金を前払いすることは減ったと見られる。結果、脱毛サロンの実態が露呈した形となったのではないか。

脱毛サロンの混乱は続く

・選択肢の多様化:利用者はエステ脱毛だけでなく、医療脱毛にも目を向けるようになっているが、医療脱毛も破産のリスクがあり絶対の安心はない。
・経営リスクへの警戒:トイトイトイクリニックの倒産の例もあり、施術を継続して受けられるか、事業継続性の見極めが必要。
・脱毛不要の考え方の台頭:海外の影響などにより「脱毛をしない選択」をする人も増え、需要の変化が進行中。

 脱毛サロンは、利用者の選択肢が、エステ脱毛だけではなく、医療脱毛にも広がっている。

 医療脱毛が必ずしも安心とは言えない。直近ではトイトイトイクリニックが倒産し、多数の被害者が出るなど、つぶれないという保証はない。脱毛サロンを利用するときには、施術を続けて受けられるか、そのサロンがつぶれないかどうかを気にする必要がある。

 コース料金をまとめて払うのではなく、脱毛の施術が必要なときにその都度支払う形も広がりを見せている。

 一方で、海外の影響もあり、そもそも脱毛をしないという考え方も見逃せない可能性がある。脱毛を希望する人が減少すれば、施術の提供体制もこれまで通りとはいかなくなる可能性がある。

 ミュゼプラチナムは、最近では、別会社が設立され、小規模に脱毛サービスを行う取り組みも始められていた。従来の脱毛サロンとは異なり、関係会社が多岐にわたるため、今後の展開は依然として不透明だ。しばらく、ミュゼプラチナムの動向は注目されそうだ。

参考文献

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」運営のMPH(株)

脱毛サロン「ミュゼプラチナム」の紆余曲折 ~ 度重なる体制変更と「第三者破産」 ~

エステ脱毛大手ミュゼプラチナム、東洋経済が一時営業停止と報道、裏に業界構造のひずみ、医療脱毛では値上げの動きも、ヒフコNEWSは「女性超えの男性需要」を伝える

【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。

ヒフコNEWS

ヒフコNEWSは、国内外の美容医療に関する最新ニュースをお届けするサイトです。美容医療に関連するニュースを中立的な立場から提供しています。それらのニュースにはポジティブな話題もネガティブな話題もありますが、それらは必ずしも美容医療分野全体を反映しているわけではありません。当サイトの目標は、豊富な情報を提供し、個人が美容医療に関して適切な判断を下せるように支援することです。また、当サイトが美容医療の利用を勧めることはありません。

関連キーワード

トピックス

「池田温泉旅館 たち川」の部屋風呂に「温泉偽装疑惑」。左はHPより(現在は削除済み)、右は従業員提供
「水道水にカップ5杯の重曹を入れてグルグル…」岐阜県・池田温泉「高級旅館」の部屋風呂に“温泉偽装”疑惑 ヌルヌルと評判のお湯の真実は…“夜逃げ”オーナーは直撃に「誰からのリークなの? それ」
NEWSポストセブン
本格的に中国進出をめざすならば…(時事通信フォト)
《年内結婚報道》橋本環奈と中川大志の「結婚生活」に立ちはだかる“1万kmの距離” 2人の異なる“海外進出の希望先”
週刊ポスト
これまでジャズ歌手などとしても活動してきた参政党・さや氏(写真/共同通信社)
参政党・さや氏、歌手時代のトラブル証言 ジャズバーのママが「カチンときて縁を切っちゃいました」、さや氏は「そうした事実はない」…真っ向食い違う言い分
週刊ポスト
もうすぐ双子のママになる。Numero.jpより。
Photos:Mika Ninagawa
中川翔子3年にわたる不妊治療と2度の流産を経験 。 双子の男の子のママになる妊婦姿を披露して話題に
NEWSポストセブン
錦織圭とユニクロの関係はどうなるか(写真/共同通信社)
「ご本人からの誠意ある謝罪があった」“ユニクロ不倫”錦織圭、ファーストリテイリング広報担当が明かしたスポンサー契約継続の理由
週刊ポスト
趣里と父親である水谷豊
《女優・趣里の現在》パートナー・三山凌輝のトラブルで「活動セーブ」も…突破口となる“初の父娘共演”映画は来年公開へ
NEWSポストセブン
岐阜の「池田温泉旅館 たち川」が突然の閉鎖、事業者が夜逃げした(左は旅館のInstagramより)
【スクープ】岐阜県の名所・池田温泉の人気旅館が突然の閉鎖 町が運営委託した事業者が“夜逃げ”していた! 町長からは228万円の督促状、従業員が告発する「オーナーの計画」 給料も未払いに
NEWSポストセブン
山尾志桜里氏は2017年にダブル不倫が報じられた(時事通信フォト)
参院選落選・山尾志桜里氏が明かした“国民民主党への本音”と“国政復帰への強い意欲”「組織としての統治不全は相当深刻だが…」「1人で判断せず、決断していきたい」
NEWSポストセブン
オンカジ問題に揺れるフジ(時事通信)。右は鈴木善貴容疑者のSNSより
止まらない「オンカジドミノ退社」フジテレビ社内で話題を呼ぶ
NEWSポストセブン
中村七之助の熱愛が発覚
《元人気芸妓とゴールイン》中村七之助、“結婚しない”宣言のルーツに「ケンカで肋骨にヒビ」「1日に何度もキス」全力で愛し合う両親の姿
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
《まさかの“続投”表明》田久保眞紀市長の実母が語った娘の“正義感”「中国人のペンションに単身乗り込んでいって…」
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン