出世レースで大きく遅れ、部屋再興の目処も立たず
古参親方のひとりは「一門や協会内で宮城野親方の孤立が深まったことにより、退職へとつながった」のだと話す。
「将来的な伊勢ヶ濱一門の統帥は、一門の看板でもある『伊勢ヶ濱』を継承する照ノ富士親方が担うことになる。白鵬は部屋が閉鎖される時に“理事選には10年間は出馬しない”という誓約書にサインしたとも言われており、出世レースで大きく遅れるのは確実。
おまけに一門内でも年寄名跡の取得や協会内の調整役を担っていた親方が白鵬と距離を置くようになり、照ノ富士と急接近している。白鵬はそのこともショックだったようだ。協会内でも師匠と呼ばれる部屋持ち親方のなかで白鵬シンパは大島(元関脇・旭天鵬)、高砂(元関脇・朝赤龍)、音羽山(元横綱・鶴竜)のモンゴル出身親方くらい。
白鵬が退職届を提出したと情報が駆け巡ったあとの5月29日に師匠会が開催されたが、そこで議題にもならなかったし、師匠から質問も出なかった。そうして協会内で孤立が深まっていたことも退職を決意した原因ではないか」
この古参親方によれば、白鵬は新弟子のスカウトも禁止されていた。部屋を再興する条件として弟子とひとつ屋根の下で生活することが義務づけられていたが、その再興のスケジュールも提示されなかった。新たな部屋建設のために16億円の抵当権が設定されている土地を取得したものの、着工していいかの判断できなかった。そうした様々な要素も影響したとされる。相撲ジャーナリストが言う。
「退職報道で世間が騒ぎ、白鵬擁護の声が大きかったことで執行部は“退職届受理”を躊躇しているとの見方もある。ただ、実際にはすぐに矢面に立ちたくないから一度は保留にしただけで、本人の意志が固い以上は理事会で容認となるでしょう。NHKが相撲中継で北の富士さんの後任に抜擢でもすれば協会も慌てるでしょうが、貴乃花や若乃花でさえ起用されなかった。協会を辞めればタダの人とタカを括っていると思います」
伊勢ヶ濱親方と照ノ富士親方が名跡交換して伊勢ヶ濱部屋の継承がなされるのは6月9日だが、「まさに同じ日に白鵬が退職の記者会見を開催するつもりのようだ」(同前)との話まで浮上している。土俵外でのガチンコ勝負が始まる。