吉田匡良監督(時事通信フォト)

吉田匡良監督(時事通信フォト)

過去にもボイコット騒動が

 この「ボイコット騒動」をきっかけに多くの関係者を取材すると、デフサッカーをめぐる過去の問題も次々と明らかになった。別の関係者が言う。

「ろう者サッカー協会には、これまでにも健全な運営とは言えないところがありました。そもそもデフサッカーは、マイナースポーツゆえ資金不足に悩み、練習環境はもちろん、備品やユニフォームなども決して充分でない状況で活動してきました。

 前代表監督の植松隼人さんは、少しでも選手らの環境を良くしようと備品購入や遠征補助の意見書を協会に提出しました。W杯での初の銀メダル獲得という快挙を成し遂げたあとのタイミングでした。

 また、選手が講演会などに登壇した際、協会を通すと謝礼は選手に支払われないといった慣例にも、疑念を抱く人がいました。中には、そういったお金が、“協会幹部の私的な遊興費に流用されている”との指摘もあった。そんな状況を受け、植松前監督の意見書には《運営費用について明朗にすること》といった内容も含まれていました」

 ところが直後、協会は植松前監督に一方的に契約終了を突き付けた。

「植松前監督は自身もろう者で、デフサッカーを知り尽くした指導者として選手からも信頼されていたのに。どうやら“監督風情が協会に意見するなどけしからん”というようなことだったようです」(前出・別の関係者)

 身を挺して選手のために動いた植松前監督の退任に対し、選手たちが協会あてに意見書を提出するという事態にまで発展した。その際もボイコット騒動があったという。

「2024年2月に、佐賀県嬉野市で行われた代表合宿には、前年W杯で活躍した主力選手は軒並み参加せず、わずか6人でしかも“代表外”の選手が参加しました。合宿が終わった後、植松前監督は開催地の嬉野市に謝罪に出向いたそうです」(前出・別の関係者)

 昨年4月12日、植松前監督は自身のSNSで代表監督退任を動画で報告した。

「選手環境を良くしていくべき。その意見書も出しました。それに対する回答書もなく、急に契約満了の通達の連絡をもらいました。これが大きなきっかけ、発端になりました。協会の人間と円滑なコミュニケーションができないのであれば、(続けるのは)難しいという判断をしました」

 植松前監督は多くを語らなかったものの、その表情には忸怩たる思いが滲んでいた。

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