妻子にも攻撃的に…(イメージ)

妻子にも攻撃的に…(イメージ)

職場で怒鳴り、妻と子供に攻撃的…

 卒業後は大手の生命保険会社に就職し、保険関連以外にも、株式、先物売買などさまざまな金融商品を扱った。最近では、会社のコンピューターシステムのチェックを行っていた。しかし、仕事では細かいケアレスミスが多かった。また自分の感情を抑えることが難しく、物にあたったり、先輩、同僚に対して怒鳴ったりしてしまうこともみられた。

 結婚して子供が生まれてからは、いらいらして妻と子供に対して攻撃的になることがよくあった。このため、妻は離婚を望んでいた。また会社からは暗にリストラの対象であることが告げられ、1~2年のうちに転職するように勧められていた。

 専門外来の受診時、症状と経過からADHDと診断されることを説明し、本人の希望もあり薬物療法を開始した。当初の投与した薬は、効果が不十分で細かいミスは減らなかった。そこで投薬内容を別の薬との併用とした。

 別の薬の投与開始により気分的には安定し、少量の服薬でも急に怒ったりすることはみられなくなった。徐々に投与を増量することにより、ケアレスミスも次第に減少した。その後数年間外来通院を継続しているが、仕事におけるパフォーマンスは平均以上のものを出せるように改善した。

 同僚や上司とぶつかることもあるが、感情的にはおおむね安定している。ただし妻との関係は修復できず、いまだに別居状態が続いている。妻の方は関係を修復する気持ちはないようだが、経済的な理由のため離婚までは望んでいないらしい。

修復が困難なのは「妻との関係」

 このケースにおいては、薬物療法が奏功し、会社では以前はリストラ対象であったが、現在は十分な戦力として受け入れられている。ただ本人は自分のパフォーマンスに満足しておらず、仕事のミスや効率について改善の余地があると考えている。修復が困難であるのは、家庭における妻との関係である。数年間別居を継続しており、関係の改善は難しいようである。

 ADHDの男性は仕事に関してはこなせている場合でも、家庭生活に大きな問題を持ことが多い。一般の人においても同様のことはみられるが、家庭において、家族の話にほとんど耳を傾けなかったり、上の空で聞き流したりしがちで、生返事で約束をしてもそのまま何もしないことも珍しくない。こういう状態が長年続くと、パートナーとの間柄が修復不能となりやすいのである。

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