“第二の人生”をスタートさせる白鵬(時事通信フォト)
「白鵬杯」はどういったかたちで続くのか
白鵬はこの大会をテコにして、伯桜鵬や川副といった宮城野部屋の力士をスカウトしてきた。「宮城野親方の弟子の取り方に批判的な師匠は少なくなかった」というのは、若手親方のひとりだ。
角界にはプロ野球のようなドラフト会議があるわけではない。部屋のタニマチや親方の出身校のパイプを通じてスカウトしているのが現状。「学生横綱などの有望株には、契約金や将来の年寄名跡取得の条件などを提示して争奪戦が繰り広げられている」(ベテラン記者)ともされる。
「そうしたなか、少年相撲大会の出場者リストは重要。国内外を問わず相撲をやっている小・中学生の名簿ができあがり、そのなかには将来の横綱候補がたくさんいる。中学や高校の相撲部関係者も喉から手が出るほど欲しいリストです。宮城野親方はそうした利点のある大会開催を通じて相撲強豪校とパイプを作り、将来的な弟子が供給されるルートを構築しつつあった。ただ、その最中に不祥事で部屋が閉鎖され、スカウト活動も禁止されてしまった」(前出・若手親方)
まさに出る杭は打たれるといったところか。宮城野部屋に所属していた元幕内・北青鵬の暴力事件をきっかけに部屋が閉鎖されると、白鵬には後援会活動や弟子のスカウトが一切認められなくなった。「白鵬杯」も中止と見られていたが、伊勢ヶ濱部屋の師匠である伊勢ヶ濱親方(元横綱・旭富士)の開催協力ということで今年2月も例年通り両国国技館で開催された。相撲ジャーナリストが言う。
「相撲協会も『白鵬杯』開催継続の必要性はわかっている。伊勢ヶ濱親方の開催協力ということだが、はっきりいって監視役でしょう。『白鵬杯』の名前が残るかわからないが、こうした大会の枠組み自体を相撲協会のものにしたい意図が見え隠れしている。一方の白鵬サイドには、来年以降は国技館を借りずに、日本で予選会だけやって本戦はモンゴルで開催するといった世界各地を舞台にした大会に移す構想があるのでは」
2027年度から全国中学校体育大会の相撲競技が廃止されるのに伴い、相撲協会が大会を継承、あるいは小学生にも拡大して別の大会にする可能性もあるとみられている。
「相撲協会は国際化には否定的なスタンス。アマ相撲大会は強豪高校―大学―プロとラインでつながっているからこそ地域の相撲クラブからの出場があるという認識でしょう。相撲協会側は白鵬が何か大会などをしようとしても、“協会の看板がなければタダの人。ひとりではなにもできない”と見ているのでしょう」(前出・相撲ジャーナリスト)
とはいえ、白鵬杯が協会の後援もなく規模を拡大してきた実績もある。どういった展開になるのか。白鵬と相撲協会のガチンコ勝負に注目される。