国内

【「愛子天皇」の誕生を願う有識者が提言】中世史研究者・本郷恵子氏「旧皇族男子の養子案は女性皇族の“使い捨て”につながる」

中世史研究者の本郷恵子氏(本人提供)

中世史研究者の本郷恵子氏(本人提供)

 皇室典範の規定を改める女性・女系天皇の容認に踏み込んだ、読売新聞の提言「皇統の安定 現実策を」(5月15日付朝刊)は、大きな注目を集めた。だが、政界では皇位継承に関する与野党協議を担った自民党・麻生太郎最高顧問と立憲民主党の野田佳彦代表の意見が対立、今国会でのとりまとめは見送られた。実現するなら今しかない──「愛子天皇」の誕生を願う中世史研究者の本郷恵子氏が緊急提言する。

 * * *
 前近代、公家や武家の時代から、宮中でも男女の役割は完全に分かれていました。女性も官位はあるが、政治や社会的な役割は男性が担い、女性は大臣や大納言に就くことはない。内廷で天皇や皇族のケア的な役割を担っていました。

 けれども、天皇だけは別でした。天皇の位は完全に世襲のもので、その血統を受け継ぐ体や生理(体に伴う条件/生身の体)を絶対条件としていた。その条件を満たしていれば、女性であっても天皇になることは可能となっていたのです。前近代において、天皇は公的な役割であるとともに、公私、内外、表と奥のような壁を越える、あるいは断絶に橋を架けられる存在だったことを示しています。

 中世史研究者としては、「天皇は幽玄の境にいらっしゃって」という歴史書『愚管抄』の記述が思い出されます。11世紀後半の院政が始まる前の状態を説明したものですが、政治は摂関家に任せ、天皇自身は、外からは窺い知れぬところで、ありがたい存在でいらっしゃいました。

 このスタイルは戦前の昭和天皇まで続き、そのもとでは国民に直接理解を求める必要はなかった。それを大きく変えたのが、ご高齢になっても被災者を見舞い、戦没者を慰霊することを続けられた平成の天皇でしょう。

 平成から令和の天皇は、「幽玄の境」を踏み出して国民に寄り添い、天皇という存在に対する国民の合意と共感を培う努力をされてきました。

 今後もその方針を続けるのであれば、旧皇族男子から養子を迎えるなどより、今おられる方々を活かすことが大事。これまで全力で公務を務めてこられた女性皇族が宮家を存続できず、新たに迎えた男性がそれを担うのは、国民から見て違和感があるのではないでしょうか。具体的にどう養子を取るのか手続きも疑問です。

 皇位継承は自然でシンプルでわかりやすい「直系・長子」を優先とすればよく、女性皇族が公務だけのために「使い捨て」にされないようにすることが重要です。自然な形で女性皇族に皇室に残っていただくには、「女性宮家の創設」と「夫・子も皇族に」をセットで実現するしかない。ただし、皇室全体の構成や皇族の絶対数等を勘案して、男女を問わず皇籍を離れる選択肢も柔軟に考えるべきです。

 歴史上、様々な危機や変化を乗り越えて続いてきた天皇制は、今日の事情に即した改変が加わったとしても、それを受け入れて活かすだけの十分な力を持った仕組みだと思います。

【プロフィール】
本郷恵子(ほんごう・けいこ)/1960年生まれ、東京都出身。東京大学史料編纂所中世史料部教授。『院政 天皇と上皇の日本史』(講談社)など著書多数。

※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号

関連記事

トピックス

バラエティ、モデル、女優と活躍の幅を広げる森香澄(写真/AFLO)
《東京駅23時のほろ酔いキャミ姿で肩を…》森香澄、“若手イケメン俳優”を前につい漏らした現在の恋愛事情
NEWSポストセブン
芸能界の“三刀流”豊田ルナ
芸能界の“三刀流”豊田ルナ グラビア撮影後に語った思い「私の人生は母に助けられている」
NEWSポストセブン
真夏の郵便配達は暑さとの戦い(写真提供/イメージマート)
《猛暑で仕事スタイルに変化》配達員はサングラスOK、半袖半ズボンが許可されるコンサル勤務の男性も「電車内で大汗をかいていると不審者か、痴漢のように忌み嫌われる」
NEWSポストセブン
ラーメン二郎・全45店舗を3周達成した新チトセさん
「友達はもう一緒に並んでくれない…」ラーメン二郎の日本全国45店舗を“3周”した新チトセ氏、批判殺到した“食事は20分以内”張り紙に持論
NEWSポストセブン
万博で
【日本人の3人に1人が栄養不良】大阪・関西万博で語られた解決の決め手とは?《キウイ60億食分を通じて、栄養改革プロジェクト進行中》
NEWSポストセブン
風営法の“新規定”により逮捕されたホスト・三浦睦容疑者(31)(Instagramより)
《風営法“新規定”でホストが初逮捕》「茨城まで風俗の出稼ぎこい!」自称“1億円プレイヤー”三浦睦容疑者の「オラオラ営業」の実態 知人女性は「体の“品定め”を…」と証言
NEWSポストセブン
モデルのクロエ・アイリングさん(インスタグラムより)
「お前はダークウェブで性奴隷として売られる」クロエ・アイリングさん(28)がBBCで明かした大炎上誘拐事件の“真相”「突然ケタミンを注射され、家具に手錠で繋がれた」
NEWSポストセブン
永野芽郁
《不倫騒動の田中圭はベガスでポーカー三昧も…》永野芽郁が過ごす4億円マンションでの“おとなしい暮らし”と、知人が吐露した最近の様子「自分を見失っていたのかも」
NEWSポストセブン
海水浴場などで赤と白の格子模様「津波フラッグ」が掲げられたら避難の合図。大津波警報、津波警報、津波注意報が発表されたことを知らせている(AFP=時事)
《津波警報中に目撃されたキケンな人たち》警戒レベル4の避難指示が出た無人海岸に現れたサーファーたち 「危ない」「戻れ」の住民の声も無視
NEWSポストセブン
中居正広
中居正広FC「中居ヅラ」の返金対応に「予想以上に丁寧」と驚いたファンが嘆いた「それでも残念だったこと」《年会費1200円、破格の設定》
NEWSポストセブン
「木下MAOクラブ」で体験レッスンで指導した浅田
村上佳菜子との確執報道はどこ吹く風…浅田真央がMAOリンクで見せた「満面の笑み」と「指導者としての手応え」 体験レッスンは子どもからも保護者からも大好評
NEWSポストセブン
石破首相と妻・佳子夫人(EPA=時事)
石破首相夫人の外交ファッションが“女子大生ワンピ”からアップデート 専門家は「華やかさ以前に“上品さ”と“TPOに合わせた格式”が必要」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン