東京都渋谷区の美容クリニックが経営破たんへ(写真/イメージマート)
東京商工リサーチが2025年7月2日、東京都渋谷区の美容クリニック、RAISE CLINIC(レイズクリニック)を運営する医療法人社団慶結会の破産手続開始決定を報じた。
美容医療市場は拡大しているが、美容クリニック間の競争激化が影響した可能性がある。
美容皮膚科的な施術を中心に運営
・運営実績と経営状況:2004年設立のクリニックは21年間運営され、2022年8月期には6862万円の売上を記録したが、採算性の悪化により赤字に転落し、資金繰りが限界に達していた。
・コンセプトと施術内容:「コンビニ感覚で続けられる、スマート美容クリニック」を掲げ、美容外科よりも美容皮膚科に近いメニューが中心。手軽に受けられる施術が多かった。
・機器導入の遅れ:高周波機器やニードルRFなどの新機器が普及する中で、導入の遅れや施術の幅の狭さが、競合との差を広げた可能性がある。
東京商工リサーチによると、運営法人は2022年8月期に6862万円の売上高を挙げていたが、採算性が低下し赤字決算となり、資金繰りが限界に達したという。設立は2004年なので、21年間運営されていたことになる。
同クリニックは「コンビニ感覚で続けられる、スマート美容クリニック」をうたっており、比較的、手軽に受けられるメニューがそろっている。同ウェブサイトを確認すると、美容外科というよりも、美容皮膚科的な施術が多いように見える。フォトフェイシャル、レーザー、ダーマペン、サブシジョン、ハイドラフェイシャル、ピーリング、イオン導入、注入治療など、美肌やシミ取り、ニキビ痕対策といった目的の施術がずらりと並ぶ。7月の休診日についてのお知らせが示されており、直前まで通常運営されていたと見られる。
このほか照射系ではHIFU、糸リフトはショッピングリフトと、肌に熱を加える美容医療機器の導入は最低限、糸リフトも大々的に行っているわけではないと予想される。
エイジングケアとして、点滴に力を入れたり、ホームケアの化粧品やサプリ販売、ダイエットのための脂肪融解注射やGLP-1受容体作動薬の処方などを行っていたようだ。
このほかにも施術が並んでいるが、決して美容医療のメニューとして競争力のある施術を提供できていたとは言い難い。照射系では、2024年までに大きく取り上げられたHIFUのトラブルで、評価が揺らいだのはこのクリニックにとっては打撃だった可能性がある。高周波機器やニードルRFなどの新しい機器が次々と出てくる中で、競合のクリニックよりも特徴を出せていなかった側面があるかもしれない。美容クリニックの運営においては、今や機器の導入を積極的に行い、他よりも充実した施術メニューを整える必要性が高まっていることをうかがわせる。
同クリニックに本来の診療時間に確認の電話をかけてみると、「診療していないので、診療時間内に電話をしてください」と自動音声が流れてきた。もはや運営が終了していると考えられた。
市場は広がるが、厳しい施設も出ている
・美容医療市場の拡大:矢野経済研究所の調査によれば、美容医療市場は拡大を続けており、2024年は前年比6.2%増の6310億円に達した。
・クリニック間の明暗:競争激化の中で、収益を向上させている施設と、逆に悪化させている施設とで、経営状況に明暗が生じている可能性がある。
・最新の破たん事例の意味:東京都心での美容クリニックの経営破たんは、美容医療市場における競争環境の変化を象徴している可能性がある。
ヒフコNEWSで伝えているように、美容医療市場は全体としては拡大が続いている。矢野経済研究所の調査によれば、2024年は前年比6.2%増の6310億円となった。市場全体が拡大しているため、美容クリニックの収益も増加していると考えられるが、個々のクリニックを見れば、施設が増加する中で、競争激化が起こり、収益が向上している施設と、悪化している施設とで明暗が分かれている可能性がある。
2024年までは医療脱毛の経営破たんが目立っていたが、美容クリニックの経営破たんが、大きく取り上げられることは少なかった。今回の東京都心の美容クリニックの経営破たんは、美容医療市場の競争が変化していることを示している可能性がある。
参考文献
美容医療市場、引き続き拡大し6310億円、矢野経済研究所が報告、2024年も非外科的治療などがけん引、アンチエイジングへの注目など心理的ハードル下がる
【プロフィール】
星良孝/ヒフコNEWS編集長。ステラ・メディックス代表、獣医師、ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BPで「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年にステラ・メディックス設立。医学会や研究会での講演活動のほか、報道メディアやYouTube『ステラチャンネル』などでも継続的にヘルスケア関連情報の執筆や情報発信を続けている。獣医師の資格を保有しており、専門性の高い情報にも対応できる。
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