「地道なマナー啓発に徹するしかない」
実際、迷惑行為を減らすために、どのような取り組みを行っているのだろうか。
「観光シーズンや毎年4月に開催している『都をどり』などの年中行事の際には、行政の協力のもと警備員の配置をするといった対策をしています。とはいえ、警備員は交通整理が主な仕事なので、芸舞妓さん個人へのボディーガードなどは難しい。この街に合わせた誘導の仕方や観光客などに対する声かけ方法のマニュアル作りを進めています」(同前)
行政などと連携して京都の観光振興を推進している公益社団法人・京都市観光協会(DMO KYOTO)では、2022年に「MIND YOUR MANNERS」と題した、外国人観光客へマナー啓発を促す英語版チラシを作成・配布している。
そのなかでは「路上で芸者を呼び止めないこと[勝手に写真を撮らないこと](Don’t stop geisha in the street. [ Don’t take photos without their permission. ])」と、芸舞妓への無断撮影の禁止を謳っている。しかし、一部の私有地である小路を除き、花見小路通り周辺は公道も多いため、撮影の全面禁止は難しいという。
「現状では地道なマナー啓発に徹するしかありませんが、芸舞妓さんはもちろん、お茶屋さんの店先で無断撮影が行われるとお客様が写り込む場合があるため、両者のプライバシー保護の面からも、ある程度の意見表明をしていく必要があると考えています。
また、去年の5月には祇園甲部歌舞練場に舞の鑑賞や記念撮影も行える公式の『祇園 花街芸術資料館』を開設しました。今後は、芸舞妓さんや花街の文化を知りたいというニーズに対して、我々からも機会を増やしてまいります」(同前)
京都市によると、同市の2024年の外国人観光客は1088万人を突破。前年比153%、過去最高を記録した。世界的に注目が集まるなか立ち現れた新たな問題にどう対処していくべきか、現地住民も戸惑っている──。
(了。前編から読む)