『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
今、テレビ業界で相次いで行われているのが人気番組をレギュラーの曜日ではなく別の曜日に放送する“越境放送”だ。多くの視聴者を獲得するためには曜日と放送時刻を固定して視聴習慣をつけることが大事と言われるが、それとは真逆の戦略と言える。その狙いとは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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6日の日曜夜に、『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』(テレビ朝日系、19時~20時56分)が放送されます。『帰れマンデー』は番組名の通り、通常は月曜に放送されている番組ですが、今回の特番は日曜の放送。この「全国大衆食堂グランプリ」という企画は今回が3回目であり、今年1月18日の土曜、4月6日の日曜に放送されるなど、むしろ月曜を避けているように見えますが、なぜなのでしょうか。
また、水曜にレギュラー放送されている『巷のウワサ大検証!それって実際どうなの会』(TBS系)も、5月31日(18時51分~20時54分)の土曜と、6月30日(20時55分~22時57分)の月曜に特番が放送されたばかり。こちらは通常放送とほぼ同じ内容だっただけに、ネット上には「なぜ月曜に?」などと戸惑う声があがっていました。
その他でも、これまで水曜夜が定番だった『旅バラ バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅24 夏に行きたい観光スポット攻略SP』(テレビ東京系、19時25分~21時54分)も、4日の金曜に放送。さらに7日夜の『アーティスト別モノマネ頂上決戦 俺にアイツを歌わせたら右に出るものはいない』(TBS系、20時55分~22時57分)もこれまで平日で唯一選ばれなかった月曜の放送が予定されています。
これ以外にも、このところ各局で曜日をまたいだ越境放送がしばしば見られますが、どんな背景や狙いがあるのでしょうか。
編成の適正化とブランドの有効活用
このような曜日をまたいだ放送は視聴習慣に逆らうことになるほか、「今日は何曜日だった?」などと視聴者を混乱させてしまうため、本来はやらないはずの編成戦略。あえてそれをするのは、それなりの狙いがあるからでしょう。
その狙いが最もわかりやすいのは、通常放送とほぼ同じ内容を別の曜日で放送した『実際どうなの会』。同番組は昨秋にレギュラー放送がスタートしたばかりであり、番組のポテンシャルを測りかねている感があります。5月31日の土曜ゴールデンタイムと、6月30日の月曜ゴールデン・プライムタイムで放送したら、どれくらい視聴率が取れるのか。水曜放送よりも視聴率が取れるのか。これらを検証したいのではないでしょうか。
ちなみにレギュラー化される前の「特番時代は月曜ゴールデンタイムと水曜ゴールデンタイムで交互に放送したうえで水曜に決定した」という経緯がありました。他局の裏番組なども含め、視聴環境を変えることで結果を最大化させる編成を模索している様子がうかがえます。
次に『帰れマンデー』から見える狙いは、ブランドの有効活用。同番組は「帰れま10」という長年にわたる特番向けのヒット企画があるほか、『ポツンと一軒家』などとコラボするなどテレビ朝日の看板番組であり、「どのように生かして稼いでいくのか」が求められています。また、“旅”と“グルメ”という鉄板ジャンルの派生企画を立てやすい汎用性の高さも曜日をまたいで放送できる理由の1つでしょう。
近年、民放各局は放送収入の低下を補うべく、ドラマとアニメを中心にIP(知的財産)ビジネスを進めています。配信によって国内外で稼ぐのはもちろん、映画、舞台、イベント、ゲーム、本、グッズ。あるいは、番組フォーマットの販売、番組そのものやキャラクターなどのライセンス許諾などで幅広く収入を得ることに活路を見い出そうとしているのです。
それがバラエティにも求められるようになり、「人気番組のブランド力をさらに上げることでIPビジネスにつなげていこう」という動きが各局で見られるようになりました。そのためにはレギュラー放送されている曜日の視聴者だけでなく、別の曜日の視聴者にも訴求していくのは自然な流れでしょう。