番組MCのタカアンドトシ 、サンドウィッチマン、松下奈緒(番組公式HPより)
「TBSの月曜夜は音楽」の編成戦略
『旅バラ』も同様にブランド価値の向上を図るようなムードが感じられます。これまで『水バラ』として水曜に放送されていたものを今年7月から『旅バラ』にリニューアルして曜日を決めずに幅広く放送していくわけですから、テレビ東京としては手ごたえを感じているのでしょう。
『旅バラ』のベースとなった『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』がはじまったのは2007年。その後、出演者を入れ替えながら放送を続け、さらに『ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦』『バスVS鉄道 乗り継ぎ対決旅』『1歩1円ウォー金グ対決旅』『ぐるり一周対決旅』『ダイアンの奇跡の安い店!沿線グルメ対決旅』などのさまざまな企画を開発することで、「旅バラエティならテレ東」というイメージを定着させてきました。
また、5日昼にもパイロット版のような位置付けで『バス乗り継ぎのプロ!太川陽介から逃げ切れるか』という“バス旅+鬼ごっこ”の新シリーズも放送されます。実は『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』の時代から、映画、ミニカー、ゲーム、体験ツアーなどを制作・販売するなど、同番組はバラエティにおけるIPビジネスの一歩先を歩いているところがありました。旅のイメージを前面に出した『旅バラ』というタイトルに変えてさまざまな曜日で放送することで、さらなるブランド力アップが期待できそうです。
もう1つの『アーティスト別モノマネ頂上決戦』はこれまで計7回を月曜以外の平日に放送してきました。ではなぜ8回目にして月曜が選ばれたのか。
注目すべきは、その前に放送される『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系、18時30分~20時55分)。同番組は昨春から放送時間を2時間に倍増させ、「TBSの月曜夜は音楽」という印象を定着させつつあります。
さらに今回は18時台に30分拡大した特番であり、音楽バラエティの『アーティスト別モノマネ頂上決戦』と合わせて、音楽コンテンツの放送時間は計4時間半(18時30分~22時57分)。継続視聴が期待できそうな編成だけに、一定の視聴率が獲得できれば次回以降も同様の戦略が採られるのではないでしょうか。
ここまで「なぜ曜日をまたいだ越境放送が行われているのか」の理由をあげてきましたが、各局で共通しているのは、「期待の大きい番組は、さらなる可能性を探ることで、収益の最大化を目指す」というスタンス。録画機器に加えてTVerの普及で番組表の概念が薄れたとはいえ、「何曜日の何時から放送されているか」の認知はテレビ局にとってまだまだ重要なだけにリスク覚悟で勝負しているのは間違いないでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『どーも、NHK』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』など。